少しだけネタばれあり
本についてのエッセイです。13冊の本をぶった斬っています。
夏目漱石『こころ』村上春樹『ノルウェイの森』俵万智『サラダ記念日』川端康成『眠れる美女』太宰治『走れメロス』東野圭吾『容疑者Xの献身』山田詠美『僕は勉強ができない』
平野啓一郎『マチネの終わりに』 又吉直樹『火花』 乙武洋匡『五体不満足』吉野源三郎、羽賀翔一『漫画 君たちはどう生きるか』林真理子『野心のすすめ』西原理恵子『ぼくんち』
前書きが良かった。
本は・・・1日の中で、ちょいちょい、僕に言葉をかけてくれるふとした一行が、僕を救ってくれる景色を明るくしてくれる心を自制させてくれる読まなければならない本なんてない。読むべき本もない。読書は、自分の心に、一滴、水を垂らすくらいの感覚でいいと思うんだ。
作者の本の読み方は、私とは、かなり違うのですが、それは普段から女性寄り、マイノリティな人たちとも多く接しているからで、そこには、目から鱗というのか、色々と気づかされることと、それは違うだろ本質が抜けていると思うことがあり、色々と考えさせられて面白かった。
例えば、夏目漱石『こころ』を男のマウンティング小説であり、教科書にのせるのはおかしいと、この名作をぶった斬っています。
先生の知識自慢も、お嬢さんを妻にしたことも、貧しいKを自宅に呼んだことも
すべて、そういう感情から来ているというのです。
僕は、エゴイズムの問題と思っていた(マウントも含まれるのかもしれないけど)。
何でもかんでも、マウンティングという風潮が嫌いなんで、少し反発を覚えました。
この名作は、ずっと教科書にのせるべきです。
東野圭吾『容疑者Xの献身』の隣りの弁当屋の女性のキャラについても怒っています。
男の理想は「か弱い女性なのか?」と言ってます。
この石神という天才的な数学教師が、隣人の弁当屋のか弱い女性の殺人を隠ぺいするため
数学を駆使したすごいトリックをしかけるというミステリーなのですが
この女性のキャラが気にいらないと怒っているのです
女性に、男性が、このイメージを求めるのは変ということみたい
美人で、か弱い女性なんて、絶滅危惧種で、本当にいたら、お嬢様か痛い女だと思うんですよね
もしくは演技。
だから、物語の中だけでもという作家の考えだと思うのですが・・・
こういう か弱い女性信仰 は良くないと、この本の作者手塚さんはなっちゃうのです。
うーん?
あと、林真理子さんの価値観の否定や、川端康成の性描写に対する批判も、ちょっと受け入れられませんでした。
まったく伝わらない。
共感できるところもたくさんありました。
又吉直樹『火花』や吉野源三郎、羽賀翔一『漫画 君たちはどう生きるか』は、私も同じ考えなので同意できました。
太宰治『走れメロス』が、古代ギリシャのシラーの「人質」という作品によく似ていて
どうして、そんな作品をこの時期(戦争中)に発表したのか
その理由を反戦的な思いと繋げたところは「すごい」と思った。
たしかに、メロスは走っている途中、友達のことも忘れ、何の為に走っているのかもわからなくなり
それでも、ただ、走るという場面がありました
戦争もそうなんじゃないか?
ここは共感しました。
あれは何のためにしているのでしょうね?
相撲のビール瓶の事件等のことも触れていて、そこもおもしろかった
僕は、すべてのコミュニティを自分の倫理観で成敗しようとする態度は、やっぱりおかしいと思うんです。自分にとっての「正しさ」は誰かにとっては、そうでないかもしれない。そうやって自分の足元を常に疑う。それしか優しい世界を作り出す方法はないんじゃないかなと思うのです。
この発言は、弱者や少数派の近くに生きている人だからこそ吐くことのできる重い言葉だと受け取りました。
これは名言です。
いい本でした。
続編が出たら、買うと思います。
絶対に買いますよ。
☆☆☆☆ の おすすめの本です。
2019 5/17
令和 10冊目