武藤吐夢@ BLOG

令和になって読んだ本の書評を書いています。 毎月、おすすめ本もピックアップしています。

2019年06月

西さんのデビュー作品は、水槽の中の亀の臭いがした



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才能というのは生まれつきのものなのかもしれないと感じた
この表題作「あおい」は彼女のデビュー作品だ

賞を受賞したわけではない
持ち込みで即デビュー
才能があるとしか思えない

この作品の感想を一言で述べるとしたら<剛速球投手>ただしノーコン
インパクトは凄まじい
「何じゃ、これ!」と叫びそうになった
とにかく面白い、予測不可能、破天荒
表題の「あおい」とは自分の子の名である
これは恋愛小説。とても切ない恋愛小説なのだ

彼は親友の好きな人だった
逢ったその日に結ばれた
一応は拒絶している。その理由もびっくり「ワキ剃ってないねん」
おいおいおい!

その彼との同棲生活、妊娠・・・という風に物語は進行していく
妊娠したことを彼に話さない
水商売の仕事を辞めた彼女は、「リゾートに行くぞ」ってのりで
夏休みの避暑地のバイトに応募するが、部屋に通されてすぐに
「辞める」と思って逃げ出す
夜道を歩きで妊婦なのに駅まで・・・
それはかなりの距離だ

その時、彼女は思う

「こんな好きになった人おらん」
体全部でそう言って、言ってから、何だこの独り言、と思った。長野のこんな山奥で、何だ、この独り言は!
「こんな好きになった人おらん」


このとき見つけたカマボコ板に「たちあおい」と書いてあって
それで子供の名前を あおい に決める

やることなすこと理不尽でよくわからないが何か共感できる
すごく切なくなってくる
それは西さんの畳みかけてくるような文体と関西弁がそうするのか
それとも主人公の人柄なのか

ただ、友達から男を奪って子供を産むだけの話しなのに
何か別の壮大な源氏物語の1つを読んでいるような
そういう読後感がある

他2編

サムのこと という話しも良かった


2019  6/30

令和 30 冊目
☆☆☆☆☆ の 楽しい作品でした。



あおい〔小学館文庫〕 [ 西 加奈子 ]
あおい〔小学館文庫〕 [ 西 加奈子 ]

「まるまるの毬(いが)」の続編。和菓子屋のアンを思い出させるような和菓子の数々・・・。



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江戸時代の和菓子屋南星屋が舞台となっております
この店は、店主の治兵衛と娘のお永、孫娘のお君の3人で切り盛りしていた
地方の和菓子をピックアップしアレンジして出す創作和菓子店です
開店すると客が行列しすぐに売り切れになる人気店
安価で珍しい菓子を提供してくれる庶民の味方です

「まるまるの毬(いが)」の続編になり、こっちを先に読まれるのをおすすめします。

毎日、2つの商品を店主たちが考え、昔、10年以上にわたって修行した手帳に書き記した菓子を再現します
今風にもっとおいしくアレンジするのが見どころ
短編小説風に毎回いろんな和菓子が出てきて楽しめます
魅力は、その和菓子なのですが・・・

この店に、雲平という男が迷い込んできて職人として働きだし
さらに、南星屋の菓子は創意工夫がほどこされて磨かれていきます
この皆の意見のやり取りが面白い
どんどん菓子が良くなっていきます

この運平には、兄弟のように修行した弟分がいて
その人が働いていた茶人で旗本の侍が死んで、その責任は彼にあり出奔したと聞かされます
その真実を探るという謎解きが別の線としてあります。
つまり、この小説は和菓子小説であり、ミステリーでもあります

この作品で美味しそうな和菓子に触れていると、思わず食べたくなります
和菓子の蘊蓄もおもしろく興味深いです
「関の戸(三重の銘菓)」は話しも菓子も良く出来ています
渡り職人雲平とお永の恋の行方、浮気して出て行った元亭主の想い
この切ない三角関係も見どころの1つなのです
元亭主の気持ちも親父さんの気持ちも娘の気持ちもわかります
お永が好きになったのが、渡り職人雲平というのが・・・
地方を回り修行の旅に出る宿命なのです
それは父親もそうでした
腕を上げるために必要なことなのです

読み終えた後、何がすごく良い気分になりスカッとします
これが時代物の魅力なのかもしれません。


☆☆☆☆ の 楽しい作品でした。

2019  6/28



密室殺人事件なのに、少しも謎解きの場面がおもしろくない。でも、面白い。


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タイトルの通り、この小説の世界は密室でできている。
密室、密室、密室なのです。
殺人の連続なのです。
それを中学生の名探偵ルンババ12が簡単に解き明かす。
複雑系の密室なのに、少しも謎解きが楽しくない
実は、この作品、私はミステリー形式をとったエンタメ小説ではないかと思うのです
話しは面白い。
でも、ミステリーとしては?
主人公たちも登場人物たちも予測不能な行動をとり変な風に転がっていき
殺人事件が出てきて解決となり、また、動き出します。その繰り返しです。
もしかすると、この小説は密室がどうしてできたのか
その理由の方に重点を置いていて、密室のトリックはどうでも良かったのかもしれません
密室って何なのか?
何のために密室を作るのか?

大雑把にストーリーを説明すると男女のトラブルに巻き込まれて怪我をし
埼玉まで連れていかれる僕
この女性は井上椿。上司と不倫中で女性の恋人がいるという
刑事に言わせると変態だそうです
その魔の手から解放され、妹の井上えのきの無免許の車で東京まで
椿の恋人の家族が殺されていた密室殺人が起きる
一家皆殺し。死体が移動。
その一家の赤ちゃんを椿は奪って逃走
その椿の家で密室状態で恋人が死んでます
ダイイングメッセージは<あ>
どう考えても椿しか犯人がいない状況ですが
犯人は椿ではありません
こんな感じの事件が最初にあります。
続けて、また密室事件が出てきて解決するという話しです。

最後は名探偵ルンババ12が家族に密室に閉じ込められ
昔、同じ部屋に閉じ込められた涼ちゃんて子の死因を身をもって解明するのです

ラスト、ルンババが屋根の上にあがり火をつけます
そこで僕やえのきが下に布団をしいて着地できるようにします

この時、「それて死んでもいいわ」と僕は思うんだけど
その理由がかわいい
密室に両親に監禁されていたルンババに同情したえのきが
梯子に上って様子を確認し同情して頬にキスをしたから
それを嫉妬してというのが最後に告白されて終わり

このラストシーンが好きです
名探偵ルンババ12と僕のえのきを巡る三角関係
これも1つの密室が作り出した謎・・・


☆☆☆☆ の 楽しい作品でした。
2019  6/26


辞書のように分厚い本なのですが、テンポが良いので楽しめます。


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オスロ警察殺人捜査課特別班シリーズの第一弾。つまり、この作品はシリーズ化しています。
どうして、海外のミステリー小説は文章の贅肉がこんなにも多いのか
登場人物も最初のページの紹介をいちいち確認しないとわからない
外国人なので、男か女の判別すらもつかず
これは刑事なのか、容疑者なのかも最初はわからず
複雑だなぁと思いながら読んでいたら、二人の刑事のキャラが目にとまった
オスロ警察殺人捜査課特別班の班長のモンクと、女刑事のミア
二人とも訳ありでそこが魅力の1つだと言える

山中で少女の殺人死体が見つかった
<一人旅をしています>のタグを吊り下げていた
立て続けに起こる少女殺人事件
容疑者は死んでいた
事件は二転三転するのだが、5人目の犠牲者として狙われたのは班長のモンクの孫だった
もちろん、ミステリー要素満載で、細かい謎解きの連続なので飽きない
早い展開で、どんどん物語は進行していく
女刑事ミアとモンクの孫が犯人に拉致されて、それを奪還するのがラストの盛り上がり
ハラハラドキドキの展開なれど、最後はすべての伏線を回収しハッピーエンド
読み終わってみれば、かなり単純な話しで
読者をミスリードさせるために、その労力とページ数を使っているのがわかる。
刑事たちが魅力的なのが良い。


☆☆☆☆ の 楽しい作品でした。

2019  6/24

セカチューの二次創作かと一瞬感じたくらい。ありがちな恋愛病気ものだが迫ってくるものがあった。



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平場とは、この場合、平均的なとか庶民的なという意味なのだろうか?
そこから見える月。夢みたいなもの。
それは儚くて切ないものなのです。

50過ぎのおっさんとおばさんが病院で再会して意気投合して
互助会みたいに互いを慰めあう。集まり二人で酒を飲む。
最初は、青砥の病気を励ますものだったが
彼女(須藤)が癌になり死んでいく・・・

同級生の恋愛、癌、死・・・
これは、もう、あれですよ<世界の中心で愛を叫ぶ>ですよ。

でも全然違う。恋愛の部分がピンとこない。
50にもなって惨めすぎる。家飲みとか、それは男同士の世界でしょと思う。
庶民というよりも貧乏でしょう。
この年代になると男も女もなくなるのかと思いきや
やることはやる。同棲までする。

だが、よくわからない理由で須藤は青砥の家を出て
また、一人暮らしを始めて、青砥は彼女の部屋にときどき泊るという
このルールがよくわからない

たぶん、一番混乱しているのは青砥の方だ。

須藤がアパートに戻った後に生じた、この先ずっと独りぼっちで立ち泳ぎで遠泳を続けていくような感覚・・・

この青砥の気持ちは理解できる

だから、須藤の検査の終わった日にプロポーズした
だが、須藤は「それは言ったらあかんやつや」と言って別れを切り出してくる。
じゃ、1年間のインターバルを置こうということになるが
この青砥の気持ちもわからない
とりあえず難題を先延ばしにしようという大人の打算なんだけど
その間、ずっと彼女を心の中で追い求めていて
その一年後に、もう彼女は死んでいたということを友達から聞かされるという
何とも言えぬ虚しさ

須藤は、その別れ話しの時も自分が悪いと言い続けた。
深読みすると、あの検査の時に、もう自分は長くないと知った
それで彼から距離を置こうとしたと解釈したいところだが
恋愛の感情というものは、かなり利己的で
そういう状態になったら、たいてい逆に彼にすがりたい
最後をみとって欲しい。ずっと近いにいてくださいと思うものではないのか

だが、小説としては、この別れが意味がある
この後にくる彼の切ない思いは、その別れによって生じるものである
1年後の復縁を期待している。彼女のことをとても愛している。なくてはならない存在だと気づく。
だが、その彼女が死んだことで、ぐっとくるわけだ。
演出として、この別れは強い。
心に打ち込む楔のようなものだ。

だが、どうしても考えてしまう
好きならずっと一緒にいるべきではないのかと
僕には、この須藤という女性がよくわからない

この須藤の妙なこだわりというのか感情が
不思議で予想外の化学反応を引き起こし
あの切ないラストへと繋がるわけです。

直木賞候補だそうです。
ぜひ、取っていただきたいと思います。
とてもインパクトのある。
何だかイライラするけど、これもありなんだなという恋愛小説でした。


☆☆☆☆☆ の 楽しい作品でした。
2019  6/19
令和 26 冊目






先日お亡くなりになりました田辺さんの清少納言を描いた傑作です。



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私の世代だと、田辺さんはよくは知らないのですが・・・
凄い人だと聞いていたので、追悼の意味をこめて読みました。

この本は、枕草子の作者清少納言の生涯を描いたものです。
一言で言うなら恋愛ものです。

その愛のベクトルの先が、男性というよりも
雇い主である中宮(天皇の奥さん)定子に対するものなのです。

例えば、こんな場面。
清少納言が周囲の人間から少し遠ざけられた時、彼女は疎外感を感じて家にひきこもり出仕せずにいたら定子中宮より文が届いた。

中宮おん手で

いはでおもうぞ

とひとことある。

これは古歌の
「言はで思ふぞ言ふにまさかる」
の引用である。
意味は、口に出さず恋しく思っている。その方が口に出して言うよりも、ずっと思いは深いのよ。

まるで恋人のような扱いなのです。

清少納言は、この中宮定子のお傍に仕えていました。
父親は有名な歌人で、本人は教養のある才女でした。
定子との相性は抜群で、まるで仲の良い姉妹のごとく
しかし、この定子の父親の関白が病で早世し
弟の藤原道長が台頭し、定子の兄たちは追いやられて惨めな境遇になっていく
最後は、中宮の座を道長の娘の彰子に奪われ定子は皇后にされてしまい
天皇の正妻は2人ということになる

それでも、定子とおつきの女たちは明るく毎日暮らすのでした。
逆境を笑いに変え、美しい物を追い求め、楽しみを追い求める毎日なのです

清少納言には、ぱっとしない夫がいました。則元という単細胞ですが、わがままですが良い人です。
この時代の婚姻は、一夫多妻制で夫には何人も妻がいます
婚姻制度もあいまいで別れたりくっ付いたりとかなり自由度が高く
宮廷においては、身分制度に雁字搦めの男たちよりも
女の方が自由な感じがしました。
偉い高官の人と対等に話しをしたり歌の交換をする清少納言を見ていると楽しげです

晩年には、父親の友人の少し年上の受領の棟世という紳士とくっつきます。
恋愛も充実しています。
文学の方でも、この時代、女流作家が隆盛し
定子皇后のライバル中宮彰子のところには、和泉式部に、紫式部などという才女が集結しており内裏は美女と才女のたまり場のような華やかな場所となっていました。
そんな女性たちと、高官の男性たちが自由恋愛をするのです

歌を使って、会話をする
相手に気持ちを伝える
すごくおしゃれだし、教養が豊かでないとできないことです。

さて、そんなの宮中とはどんなところなのか・・・

まったく宮中くらしほど面白いことがこの世にあろうか。
そこにはすべてのものがあった。男も女も奢侈も栄華も。
権力も阿諛も、粋も無粋も,典雅も俗悪も。
その頂点に光輝くのが若き主上と、美しき中宮であられた。


となる。

夫が愛人を増やしていくのを見て、清少納言が彼に・・・

男って、そういくつもの愛情を分けられるものなの?
分けられるんじゃない増えていくのだよ


清少納言の美意識が見て取れる場面を・・・

風流と言うのは、ほんのちょっとの、ちらと掠めた噂がいい。噂から、それからそれへと想像する。それが面白い。ほととぎすの声だって仄かにきくからいいのであって、今日の明順朝臣の家のように、かしましいばかりに鳴いていたのでは、かえって興趣をそがれてしまう。

笛は何が好き?
遠くから聞こえる笛の音が、次第に近くなりますのも心おどりますし、反対に、近くで聞こえていたのが遠ざかっていくのも、しみじみとした風情でございますね。

最後に、清少納言が自分の作品<枕草子>について語っているところを紹介します。

私の書く、あの<春はあけぼの草子>、人間にとって幸福の何たるか、以外のことは書きたくないんだもの。それは書き手が幸福でなくてはならないんだもの。


平安時代の女性って、今と似ているのかもしれません
イケメンが好きで、人のうわさも好き、犬や猫や子供などの可愛い物が好き
自由に好きになって、別れて

とにかくポジティブです。本当は色々もっと辛いこともあるのでしょうが、幸福について書いてあるのだから、そういう所はカットしたのでしょう。

読むのに一週間かかりましたが、とても楽しい世界でした。
まるで、王宮に暮らしているような気分になれます。

☆☆☆☆☆ の 楽しい作品でした。
2019  6/16


シリーズ三作目は、バリスタの大会で起こった事件でした。


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珈琲店タレーランの事件簿シリーズは短編の方がいい。
たぶん、この作者は長編に慣れていないのだと思います。
本作は、あまり切れ味が良くない。
考えられる要因は、その作品の長さにあります。間持ちがしない。
せっかく完成しているキャラが生きていません。お笑いキャラのおじちゃんの出番が少ないのも理由かもしれません。

バリスタの大会に参加した切間美星は、3つの妨害事件に遭遇する。

1つ目は、せっかく用意した出場者の珈琲豆に不良品の豆が混ざるという事件。
2つ目の事件は、塩の代わりに胃薬が混入されていた。
3つ目の事件は、牛乳が苺ミルクのようになっていた。

いずれも異物混入事件。
出場者の出番を台無しとするものでした。

これらの材料は、密室となっている準備室に完璧な状態で保管されていたはずなのである。

ミステリーなので謎解きは触れません。
動機の面で、少し捻りがあり
犯人も複数となっております

単純なミステリーではなく複雑系です

これは大事件だと思うのですが、解決した後も運営サイドの対応は甘く
犯人のうちのある人たちは、反省すらしていないと思うし
たいした制裁も受けません
或る犯人は病院の治療費まで出して貰えて
何なのだろうと思ってしまう

バリスタにとっての生命である珈琲豆に細工したりする人間の作る珈琲なんて飲みたくないのですが
運営サイドはやたらと寛容な対応をとるのです

罪を憎んで人を憎まず
才能あるものの芽を摘まず
そんなところでしょうか?

最後に、犯人から切間バリスタが5年前に教えを受けたシーンがあります。
犯人のバリスタの言葉が良いのです

「おいしい珈琲を入れるコツ。それは混じり気のない心で、珈琲を入れることだよ」

おいおい、それをお前が言うのか!!。

その教えを守って切間美星はバリスタとして頑張り
その言葉を吐いた有名バリスタは異物混入事件を起こすという皮肉。

登場人物がみんなクズすぎて
まったく共感はできなかった。
ただの謎解きとして楽しむべきなのかもしれない。


☆☆☆ の 楽しい作品でした。

2019  6/10

令和 24 冊目

USED【送料無料】珈琲店タレーランの事件簿 3 ~心を乱すブレンドは (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) [Paperback Bunko] 岡崎 琢磨
USED【送料無料】珈琲店タレーランの事件簿 3 ~心を乱すブレンドは (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) [Paperback Bunko] 岡崎 琢磨

インスタで人気化した凶暴猫との暮らしを描いた漫画



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インスタでは何度も見ていたが、まさか書籍化するとは思ってもいなかった。
凶暴すぎる猫バロンと老猫のラムとの生活
ほぼバロンが主役

バロンとの出会いの部分は知らなかったので
そこが読めて嬉しい


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絵に関して言うと上手いとは言えないが
荒々しいので、バロンの凶暴なところは表現されています

冬の朝は寒いので、エアコンのタイマー設定をしていたのに
反応しない
バロンが毎朝、リモコンを踏みつけていたのが原因というコマは笑えました

動物というのは、小さな子供と同じで
自分を見て欲しいという自己アピールが強くて
うちの飼ってたのも、私が少ししかると
夜中に部屋の前にうんこをしていました
わざわざ階段を昇って、部屋の前でうんこをするのが凄い

動物というのは、基本、条件反射のような感情で動くので
可愛がるとなつくし、嫉妬もする
この作者の猫は、そこに暴力が加わりおもしろい展開になります

ラムという猫も飼っているのですが、こちらの何でも舐める癖の方が汚く
私的には嫌です

☆☆☆ の とても楽しい作品でした。

2019  6/9
令和 23 冊目




深海を見てみると、地球が生き物である、繋がっているということが実感できる。




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この楽しそうな表紙と、最初に出てくる写真を見て楽しそうと思った。
内容は楽しい。だが、書いているのは大学の先生なので難解だ。
だから、理系のある程度の知識が必要かもしれない。
私も8割理解できたかどうかである。

モチーフは、タイトルそのまま
深海である。

三部構成になっていて、深海の生物、地震、その他(資源、ゴミ)となっている。

深海の生物については、自分が探査機にのっているような演出で解説も前半はわかりやすく
深海の生物について、とてもわかりやすく興味深い
わくわくするような内容なのですが、後半は難しくなる。

興味をひいた事柄だけ、さわりだけ紹介すると

生物というのは光合成で発生しているのだが
光の届かない深海にも生物は発生するという話しだ。
これを化学合成生態系と言う。

海底から熱が噴出している所に生物が産まれる
その噴出してくる水に、地中に含まれている色んな物質が混ざってという話しで
これなら、表面が凍土でもうちに海があり内部にマントルがある構造なら
地球外生物もと考えてしまうのです。

深海の生物は、菌と共生している
食べ物を食べない代わりに、それらの共生している菌から栄養素を得る
生物学で言う寄生と何となく似ているが、ちょっと違うようだ。

水族館で見る発酵する海月の意味もわかった
背中に浴びる光と同じくらいの光を腹から発し、その姿を見えにくくするためだそうだ

他にもたくさんの深海の興味深い話しが書いてあった。

2部の地震の話しは、知っている知識を専門用語で解説されたような印象しか感じなかった。
読みにくい。少し困惑した。
東北の地震の後に、深海を調査した話しが後半あり
これは、おもしろく楽しめた。

日本海海溝の近くは堆積物が柔らかいのでズレが生じにくいと思われていた。
しかし、探査の結果、そうでないことがわかったのだという。
一度ズレると大きくズレることになり、それがあの津波になったとのことだった。

地震は、プレートの移動(ズレ)が原因だが、普段は意識していないが、地面の底にマントルがあり
それがプレートを少しずつ移動させているというのを再認識させられる
地球も生きているのだとわかる

3部のその他のところでは、地下資源の話しが興味深かった。
二酸化炭素は、1/2がそのままで、残りが森林と海に吸収される。
海に、吸収されると二酸化炭素は、PHを下げてしまうため、石灰化生物の貝とか蟹の甲羅のある生き物の石灰でで来ている部分が形成されなくなる
昔、火山が爆発していて時期には、これらの生物が激減したこともあり
このままじゃ、そういうことになりかねないという懸念を表明していた

深海に、鉱床があるのは沸点の違いかららしい
水は100度で沸騰するが、深海だと気圧が違い300度くらいになる
そのため、そのような物質が残っているのだ。例えば、メタンハイドレートとか。

二酸化炭素を深海の中で液体として安定させることが可能で、そういうことも始まっているという話しは面白かった。じゃ、どんどん二酸化炭素は深海に移そうとか思うのである。
それにしても深海には、たくさんの資源がある。

プラスチックごみが、たくさん海にあるという話しには驚いた。
2050年には、海のプラスチックの総量は、海に住む魚の総重量を超えるという予測がされているらしい。
深刻なのは、マイクロプラスチックで、これは魚なのが体内に取り込んでしまい
その魚を人が食べると悪影響があるかもという懸念だった。

深海は、別世界という認識が、この本を読むと自分たちの世界と繋がっていると認識に変わる。
不思議な深海のメカニズムに触れ、地球というものの見方が少しだけ変化した。

内容は少し専門的で難解だが、書かれている話しはとても面白い
理系の人は楽しめると思います。
おすすめです。


☆☆☆☆☆ の とても楽しく内容のある作品でした。

2019  6/8



人生をやり直すことは無理だが、それを追体験するのは意味がありそうだ。



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彼が赴任した学校は、母校だった。
彼は、他人から見て優秀な教師。だが、本当は惰性でやっているだけ。
母校には幽霊が出る。
名前は、イシイカナコ。彼の同級生だった。
彼女が自殺した時、屋上から飛び降りて落下した場面で、たまたま教室にいた彼と目があった。
そんな彼が、イシイカナコの幽霊に人生やりなおし事業などと言われて十数年前の高校時代に・・・。
よくありがちなタイムリープものだが
この作品の斬新なところは、自分としてやり直すのではなくクラスメートに入ってしまうところである。
次々に、クラスメートの中を移動しまくり、その度に騒動を起こすというコメディのような展開となる。

ある女子生徒に憑依した場面では、自分に告白し、付き合ってしまうという過去の改変までしてしまう。
前半は、とにかく面白い。ページが進む進む・・・。

イシイカナコの霊と契約し、彼女を自殺させないように動くことになる。
高校生なのに、地の教師がときどき現れては、教え導こうとするのだが
なかなか上手くはいかない。

このタイムリークは、人生やり直し事業なのである

人は、生きていると後悔するもので
ここをやり直したい。ここは後悔しているという所があるものだ。
それを追体験することで修正しようというのである。


彼の指導教員だった人の言葉が心に残った。

受験と就職と結婚で゛妥協したり諦めたりすると後で絶対に後悔する

18歳の京平(自分)の言葉もいい

自分がなりたかったものに絶対になれないって気づいた時、昔の自分を裏切ることになるのが、きっと、一番辛いんだろうな。人生間違ったみたいな・・・。


普通の物語なら、人生を修正しハッピーエンドになるのだが、この物語ではそうはならない


「イシイカナコは後悔や無念の残る場所に、その人を連れて行ってくれる」って私は聞きました。
「現実は変えられないけど、その中の人にある過ぎ去ったあの日の後悔を救ってくれるんだって」

つまり、どんなに足掻いても頑張っても過去は変えられない
それでも、彼は頑張る。必死に、石井加奈子を救おうとする。
運命は変わらない。石井加奈子は死ねと決まっているのだ。

最後にでた彼の台詞は良い

やり直しなんかできないけど、失敗が許されないわけじゃないんだ。

この物語の結論は、ここだと思う。
無意味に思えた4か月のやり直し人生が導き出した答え
それがこれだった


失敗が許されないわけじゃないんだ


石井加奈子は、結局、死ぬ。

受験がうまくいかなくての自殺ではなく、狂言自殺をして、みんなに同情して貰おうとして
そんな時に強風で・・・ということだった。

このシーンを、私はこう解釈した。
本当は自殺だったのかもしれない。
彼が努力したことで、狂言自殺となった。
過去は変えられない。
でも、人の心は変わることもある
努力は意味がある

ミスをした人生
そこで終わりじゃない
失敗は許されないわけではない
そこから、どうやるかが大切なのだ



☆☆☆☆ の とても楽しい作品でした。

2019  6/6

令和 21 冊目





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