武藤吐夢@ BLOG

令和になって読んだ本の書評を書いています。 毎月、おすすめ本もピックアップしています。

2020年03月

大奥に、薬屋の娘である猫猫が入廷するのだが・・・。ミステリー小説です。


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大奥で、毒見役となる猫猫は、薬屋の娘である。
薬屋と言っても、養父が宮廷の元医師で仕込まれているので医者顔負けなのです。
宮中の藪医者のおっさんよりも腕は上。
その知識と経験を武器に、難問を解き明かしていく宮廷ミステリーというカテゴリーに分類されるのでしょうが、本作、ミステリーとしては頼りない。
続編も出ている評判高い作品ではあるが、私としては、さほど・・・なのでした。

これ毒です


猫猫は、マッドサイエンティストです。
自分で毒を飲んで実験とかする十代の女の子。
変態女です。

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一番、王に寵愛されている愛妃の毒見役になる。
きっかけの事件は、王の子供が連続で死亡するというもの。
結論から言うと、おしろいが毒で、赤ちゃんはソレが原因で死んでいた。謎解きされても拍子抜けなんです。どういう成分が身体に悪いとかわからないし、ずっと、そのおしろいを使っていたみたいなのに、どうして急に事件に・・・。矛盾がいっぱいあります。
ほとんどの話しが、このパータンで、それでも楽しいのはキャラがおもしろいからです。
アニメ化とかすると高評価になりそうです。

大奥が舞台なので、女同士の駆け引きが色々とある。

  薬屋 を やってき て 思う、 女 の 笑み ほど 恐ろしい 毒 は ない と。

女の人間関係は複雑です。

先ほど、猫猫の出世のきっかけは「おしろいに、毒がある」こと発見したことと言いましたが、本人は単に、『おしろい は どく、 赤子 に ふれ さす な』とメモを残しただけで出世なんか考えてなかったのです。出世欲のまったくない女です。
というか、無能なままでいたかった。

女性どころか男性までも恋に落としてしまう美貌の持ち主の壬氏という宦官がいます。

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この二人のやりとりがおもしろい。
この物語の魅力は、ここにあると思います。
猫猫は、ツンデレで位の高い壬氏にも、自分より上の人にも毒舌を吐く。



子供をなくした妃が病気で、その原因を探りに来たのです。
死にかけの妃に、化粧している女たちが・・・。
自分の妃に、いつまでも美しく・・・という気持ちはわかるが、毒なのですよ。おしろい。だから、死にかけている。そんな無知な女たちに毒舌攻撃。

「誰 が 自分 の 餓鬼 殺し た 毒 を 喜ぶ ん だ よ」
と毒舌。


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これは
キャラ小説だと思います。
読みやすく、雰囲気もいいので悪くはないのですが・・・。
ミステリーとして、まったく面白くない。
子供向けでしょうか?。
漫画にもなっています。
2巻は買わないことにします。

2020 3/29
令和2年 52冊目
***


薬屋のひとりごと (ヒーロー文庫)
日向 夏
主婦の友社
2018-04-27




犬の視線で見ると、いかに人間が愚かで自分勝手なのが見えてくる。


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最初、犬が主人公だということに気づかなかった。
バックと言われても、アメリカ人と思うよ。

売り買いされて、アラスカかカナダ辺りの寒い所に連れていかれて犬橇の仕事をさせられる。
1903年に発表された作品だから、120年くらい前の話しなのかな。
この時代、犬橇が開拓者の唯一の通信手段だったと説明にある。過酷な運命にされされることになった犬が、野生の本能に目覚めていく物語だ。

まずは、その集団の犬間関係なのだが、群れにはリーダーがいて。
その力関係とかの描写がおもしろく、だんだんバックは頭角を現していきリーダーにとって代わる。
個々の駆け引きやら戦いがすごくおもしろい。リアルで、まるで犬世界を見て来たかのようである。

さて、犬と人間の関係だが・・・

棍棒 を 持っ た 人間 は、 掟 を 定める もの で あり、 必ずしも 心服 する には 及ば ぬ に せよ、 ひとまず したがわ ね ば なら ぬ 主人 で ある、 との 教訓。 

かなり暴力的だ。まったく思いやりというものがない。
主従の関係を暴力によって押し付けているのだ。

まずは、カナダの郵便の仕事につく。これはかなり過酷で、犬たちはどんどん死んでいく。
使い物にならなくなったら二束三文で売られる。

夫婦と弟という白人たちに買われるのだが、酷い人たちで犬たちはどんどん死んでいき
途中で食料がなくなっていく、飢え死に近い形で死んでいく。
最後は、この飼い主たちも死んでしまう。

人間の世界を犬目線で見るというのは斬新で、いかに、人間がいい加減で愚かであるということがわかる。

必要のないものまで載せるから橇は進まない。犬は疲れる。犬の食糧に限りがあるのに最初にたくさんやるから、途中でなくなってしまう。
犬がどんどん死んでいくのは人間たちのせいなのだった。

最後の飼い主はいい人だった。
ニヒルな人とあまりじゃれ合わないバックなのに、何となく心を通じさせるのだが・・・。
森で殺されてしまう。
一人になったバックは、狼たちの群れに吸収されていく。
これがラストなのだが・・・、あの人間を殺すのはかわいそうだなと思ってしまった。

犬の達観した死生観がおもしろい。

死ぬ という のは、 動き が 止まる こと、 生ける もの として の 生 から 抜け だし て、 去っ て ゆく こと で ある。

飼い主の死も仲間たちの死も、彼はドライに受け止める。
そして、人生の次のステップに進むのだ。

人間の書いた小説なのだから、この擬人化された動物たちは、動物的本能ではなく、人間的倫理観とかにもとずいて行動します。
暴力によって従わされているだけなのに、群れのリーダーが仕事をコントロールして最適な状態にするのが、いかにも人間的だ。
「弱いものをいじめてはいけない」とバックの中には人間的な倫理観があります。
動物に、こんなのあるのだろうか?。

そのうちに、バックが過酷な運命に身をおくうちに、野生に戻っていくにつれて、野生の感覚がよみがえっていく。動物とは、室内で飼われるものではなく。本来は、そういうものかもしれないと思わされる。

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読後、もっとも印象に残ったのは、最後の優しい飼い主が死ぬシーンではなく。
その前に、無計画に犬ぞりの旅をしていた夫婦と弟のことだった。

人間とは、何て愚かなのだろう。
そう思わざるおえない。


2020 3/26
令和2年 51冊目
*****



野性の呼び声 (光文社古典新訳文庫)
ジャック ロンドン
光文社
2007-09-06

自分を痛めつけて何かに熱狂する。自分の内なる声に耳を澄まさない限り,天職になど出会えるわけがないのだ。


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見た目通りの激しい人である。
本書は、「読書という荒野」と内容的にかなり重複がある。
見城社長の人生哲学とでもいうのだろうか?。
とにかく、激しい生き方であり、これを真似できるかというと難しいような気がする。

SNSの質問に対する回答という形式を取りながら、自分の生き方や人生観のようなものを言葉という武器で繰り出してくる。そういう書でした。
反発する内容もある。だが、彼はそれで成功している。それは事実だし、学ぶところも大きい。


言葉がメインなので、それをピックアップしてみる。

・自分を痛めつけて何かに熱狂する。自分の内なる声に耳を澄まさない限り,天職になど出会えるわけがないのだ。

・朝 から 晩 まで 仕事 について 考え抜き、 骨 の 髄 まで 仕事 に のめり込む。 そして 上司 や 同僚 が でき ない 仕事 を 進ん で 引き受け、 結果 を 出す。   そう すれ ば、 自然 と 仕事 は 面白く て たまらなく なる はず だ。

・圧倒的 努力 とは 何 か。 人 が 寝 て いる とき に 寝 ない で 働く。 人 が 休ん で いる とき に 休ま ず に 動く。 どこ から 手 を つけ たら いい のか 解ら ない 膨大 な もの に、 手 を つけ て やり 切る。「 無理 だ」「 不可能 だ」 と 人 が あきらめる 仕事 を 敢えて 選び、 その 仕事 を ねじ伏せる。 人 が あきらめ た として も、 自分 だけは あきらめ ない。

・はっきり言おう。「金が全てだ」。

・売れる 本 は 良い 本 で あり、 売れる 本 は 無条件 で 尊敬 す べき なの だ。

・大手 だ とか 給料 が 良い だ とかは 関係 が ない。 これ なら 日本一 に なれる という こと を 突きつめる べき だ。

・ どこ まで 自分 に 厳しく なれる か。 相手 への 想像力 を 発揮 できる か。 仕事 の 出来 は こうした 要素 で 決まる ので あっ て、 学歴 で 決まる わけ では ない。

・ 人 は 誰 もが 全員、 死 を 背負っ て 生き て いる。 生 から 死 への 道 は 一方通行 だ。

・努力 する こと に 意味 が ある などと 言う のは 単なる 人生 論 で あっ て、 仕事 に関して 言え ば「 成功」 という 結果 が 出 ない 努力 に 意味 は ない。 いや、 そう 考える しか ない ので ある。


・. 憂鬱 で なけれ ば、 仕事 じゃ ない。 毎日 辛く て、 毎日 憂鬱 な 仕事 を やり 切っ た 時、 結果 は 厳然 と あらわれる。

・「 もう ダメ だ」 からが 本当 の 努力 で ある。   圧倒的 努力 が できる か どう かは、 要は 心 の 問題 なの だ。 どんなに 苦しく ても 仕事 を 途中 で 放り出さ ず、 誰 よりも 自分 に 厳しく 途方 も ない 努力 を 重ねる。 できる か でき ない かでは なく、 やる かやら ない かの 差 が 勝負 を 決する の だ。

 ・苦しめば苦しんだ分だけ結果が出る。

・痛みのないところに前進はない。

・仕事 を する からには、「 ひと休み する」 という 発想 は 捨て て 常に 熱狂 し て い たい。

・世間 が 注目 し て いる 頃 には、 僕 は その 仕事 を 弊履( 破れ た 草履) の よう に 打ち捨て たい。 次 の 無名 の 人 と 一緒 に 何 かを たくらみ、 新しい 仕事 を 爆発 さ せ たい。

・ 人生 に 空白 を 作ら ず、 岩盤 に 爪 を 立て て あがい て いる うち に、 いつか きっと 熱狂 できる 仕事 に 出会える はず だ。   フランス の 作家 アンドレ・ジッド は、『 地 の 糧』( 今日出海 訳、 新潮 文庫) という 本 で 次 の 一節 を 記し た。 この 一節 が、 僕 は たまらなく 好き なの だ。   〈ナタナエル よ、 君 に 情熱 を 教えよ う。   行為 の 善悪 を《 判断》 せ ず に 行為 し なけれ ば なら ぬ。 善 か 悪 かを 懸念 せ ず に 愛する こと。   平和 な 日 を 送る よりは、 悲痛 な 日 を 送る こと だ。 私 は 死 の 睡り 以外 の 休息 を 願わ ない。( 中略) 私 の 心 の 内 で 待ち望ん で い た もの を ことごとく この世 で 表現 し た 上 で、 満足 し て―― 或いは 全く 絶望 し きっ て 死に たい もの だ。

・僕 は 若い 頃 から「 これ は 売れ なかっ た が いい 本 だ」 という 言い訳 は 一切 やめよ う と 決め て き た。

・ 一番 判り やすい 結果 は 利益 を いくら 上げ た かで あり、 それ を 曖昧 に し ては 駄目 だ。

・すべては無知と無理と無茶と無謀から始まった。

・「ヒンシュクはカネを出してでも買え!」というのは「悪名は無名に勝る」という僕の心の叫びだ。新しく出てくる者は周りから顰蹙を買うくらいが丁度いい。

・今日考えたことを明日には具現化し、できたものをさらに改善する。そういう努力をスピーディに繰り返さない限り、仕事はダレていく。

・10万部のヒットを出せた者は、それから何度も10万部の本を売れる。ひとたび成功体験を得れば、壁を突破するための方程式が見える。それが肉体化する。

・いい気になっておごり高ぶる傲慢な人間は、必ず堕ちていく。ビジネスの世界を勝ち抜く本当のしたたかさを持っていれば謙虚に振る舞うのは当然だろう。

・相手がどんな大物の作家であろうと、僕は僕の価値観で朱を入れて来た。

・小さなことを大切にするだけで、人生は大きく変わっていくはずだ。

・貸しは作っても借りは作るな

・自分で汗をかきましょう。手柄は人にあげましょう。そして、それを忘れましょう。

・スランプの時はとことん落ち込み、自分と向き合うのだ。

・圧倒的な努力と破産しても良いという覚悟が起業には必要だ。

・覚悟を持って現実と格闘した先にしか大きな結果はない。「覚悟」とは、このためには死んでもいいと心に決めることである。

・迷いがあっても一歩前に踏み出し、暗闇の中でジャンプすればいいのだ。

・「自分には必ず死が訪れる」と認識した時、生が輝き始める。生きているうちにやるべきことが見えてくる。

・アメリカ先住民の言葉
「君がなんとなく生きた今日は、昨日死んでいった人たちがどうしても行きたかった大切な明日だ」

この本は、最後まで読んで欲しい。
その時、何かが自分の中に湧き上がってくる。
それは見城さんの熱情だ。
それは感じる価値のある情熱なのだ。





2020 3/24
令和2年 50冊目
*****


たった一人の熱狂 (幻冬舎文庫)
見城 徹
幻冬舎
2016-04-12


読書という荒野 (NewsPicks Book)
見城徹
幻冬舎
2018-06-05



総理の物まねをしていた男が、総理の影武者に。ラストは感動なのです。



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これはコメディなんかじゃない。真面目な政治小説だ。
人気の若き総理の物まねをしていた役者が、拉致される。
総理の影武者になってくれと頼まれる。

さて、これが物まねをしていた時の彼の台詞である。


「わたし の 公約 は 脱 原発 です が、 これ は 少子化 対策 の 一環 でも あり ます。 原発 を 停めれ ば、 当然 国民 の 皆さん には 節電 を お願い し なけれ ば なら ない。 会社 では 残業 でき なく なり、 旦那 の 帰り が 早く なり、 明かり を 消す のが 早く なり、 寝る のも 早く なる。 暗闇 で 男女 が する こと と いっ たら、 まあ 一つ しか ない から 自然 に 子供 は 増える」   この くだり を 本人 そのまま の 熱血 口調 で 話す。 口調 と 内容 の ギャップ で 更に 笑い が 起こる。 「子供 が 増えれ ば 年金 問題 も 解決、 予算 を 他 に 振り分け られる から、 もっと ちゃんと し た 目的 に 税金 を 投入 できる。 カネ さえ あれ ば 大抵 の 問題 は 解決 できる。 北方領土 だって、 北朝鮮 に 拉致 さ れ た 人 たち だって、 お カネ で 買っ て しまえ ば いい ん です よ」

こんな男が、影武者になると別人のようになる。
人間とは不思議な生き物だ。
その立場が人をそれっぽくさせていく。


先生 だ から 正直 に 申し上げ ます が、 日本 を 動かし て いる のは、 政治家 では なく 官僚 です。 国策、 予算、 立法、 行政 全て が 彼ら の 意思 によって 統治・運営 さ れ て いる。 わたし たち 国会議員 は それ に 追随 し、 追認 する だけの 存在 に 成り下がっ て いる のが 現状 です

官僚政治の実体を突き付けられる。
そのせいで復興支援が停滞している。これは可笑しいと思う。
何とか、せねば・・・。
彼の発想は子供と同じだ。可笑しいと思うと、それを口にして、周囲の人に、どうすればいいのかを聞く。それをやる。恐れなどない。無知であると言うことは、時に大きなものを動かす原動力となるのだ。死んだ総理は、官僚の統制をしようと考えていたと聞かされて、俺がそれをやると言い出した。
それが影武者としての俺の使命だと思うのである。


この政権は、自民党の安倍政権そのものである。
民主党の悪夢のような無能混乱政治から解放され、これから経済政策を・・・という時に、カリスマ首相が病気で倒れた。そこで影武者の登場だ。
経済政策は、インフレターゲット。円安に、株価を押し上げるという政策だからアベノミクスのスモール版だ。書かれた時期のことを考えると、政策的には妥当だと思う。
反原発に、復興支援、官僚の統制・・・。
しかし、反対勢力も多い。

官房長官と、親友の政治学者しか、彼が影武者であることは知らない。
どうにか、乗り切るが・・・、総理が死んでしまう。

その後の展開は無理筋である。
ただの役者が首相の役割をこなせるわけがなく。この小説には、そういう無茶が潜んでいる。
おもしろいのは、彼が素人政治家であることだ。
真摯に国民の幸福のみを考えて政治をしているので、皆が彼に巻き込まれていく。

彼は本音を相手にぶつけてみる。官僚を擁護する族議員が相手だ。

「わたし は 先月、 石巻 の 被災 地 を 視察 し て 参り まし た」 「ほう、 それで 義憤 心 に 火 が 点い た とでも 言わ れる のか。 失礼 だ が、 為政者 として は あまりに ロマンチスト に 過ぎる よう な 気 が する」 「政治 に ロマン を 求め ては いけ ませ ん か」


政治にロマンを求める。私は、これは素晴らしいと思った。


実際の人物らしき人間も出てくる。
社会民主党の福島さんらしい無能で頑固な何でもNOおばさんや、小沢一郎っぽい野党の元党首。
スキャンダルを出した議員の対処方法や、多数派工作の説得も素人っぽくて新鮮でおもしろかった。

盟友の幹事長が心筋梗塞の発作で他界し、親友の政治学者も外国に・・・・。
孤立無援となった時、異国でテロが発生する。
しかし、日本には外交ルートはなく。3時間ごとに人質が殺されていく。
そこで防衛大臣が、自衛隊に特殊部隊がいると話すのだった。

さて、このまま全員が死ぬのを坐して待つのか?。
憲法違反を承知で特殊部隊を出すか?


当然、政治家としての判断は前者だが、彼は何よりも国民の生命が大切なのである。


  自国 の 国民 が 一人 ずつ 殺さ れ、 その 映像 が 世界 に 流れる。 そんな 状況 に 置か れ ても なお、 他国 に 手 を 合わせ 平身低頭 し、 自ら は この 島 から 一歩 も 外 に 出よ う と し ない。   それ が 本当に 独立 し た 国家 の 姿 なの だろ う か。

さぁ、どうする?。

二十 数人 の 生命 と 一億 二 千万 人 の 生活 の どちら を 優先 す べき か。 非情 な 判断 に なる が、 我々 に 求め られ て いる のは 国 と 国民 の 利益 だ。 同情 心 では ない


彼は真剣に悩む。自分の保身のためではない。
生命と国益を天秤にかけているのだ。
悩んだ末に、彼は、特殊部隊を派兵する。
坐して、彼らの死を受け入れられないと思ったのだ。

作戦は成功した。されど批判だらけである。


「なぜ なら、 自衛官 が 国民 から 歓迎 さ れ 感謝 さ れる 時 は、 外国 から 攻撃 さ れ て 危急存亡 の 刻 か 国民 が 困窮 し て いる 時 だ。 自衛官 は 日陰者 で ある 時 の 方 が 国民 や 日本 は 幸せ なの だ……。 これ は 吉田茂 元首 相 の 言葉 です。

テロの問題は、静観して人質皆殺しでも、特殊部隊を派遣しても、どちらでも野党の攻撃対象となる。
特に、後者は憲法違反なので最悪だ。
野党は非難するのが仕事であり、メディアは面白ければいい。

影武者首相の決断は失敗だったのか?。

これは憲法違反でないと法の番人のように人が言い出す。
この国の領空を侵犯する許可は得ていた。攻撃をしたのは、日本大使館の中で治外法権。これは海外派兵にはならない。テロ撲滅行動であると・・・。国会の事後承諾があれば、OKとなるらしい。

ここらの理屈はちょっと・・・。
もちろん、メディアは納得がいかない。
野党も認めない。私だって変だと思う。

首相は叫ぶ。

「わたし の 決断 が 政治家 として の 判断 では なく、 人間 として の 感情 から くる もの で あっ た こと は 否定 し ませ ん。 しかし 政治 が 人間 の 所業 で ある 限り、 その 基盤 と なっ て いる のは 理屈 よりも 感情 の はず です。 困っ て いる 者 を 救い たい、 世の中 の 不公平 を 是正 し たい、 悲劇 を なくし たい。 そういった 感情 を 実現 する こと こそ が、 政治 の 役目 なのでは ない でしょ う か。 政治 という のは 正しい こと の 追求 では なく、 窮地 に 陥っ た 者 と 陥ろ う と する 者 を 救う こと では ない の でしょ う か  

これが作者の政治家に求めている姿なのだと思う。
自分のことばかり考えて何もしないのは政治じゃないと思っているのだ。

 窮地 に 陥っ た 者 と 陥ろ う と する 者 を 救う こと 

それが政治家のすることだ。

もちろん、それは理想論で憲法9条のことや、この行動によって中国や韓国の反発。経済的な犠牲を考えると、私ならちょっとできないと思ってしまう。
20人の生命より、憲法9条順守に重きを置いてしまうと思う。

でも、心のどこかで作者に賛同する部分もあり、それは理屈抜きの部分なのだ。

首相は国民に是非を問う。
NHKを利用しDボタンで国民に賛成か反対かを問うということを訴える。

メディアを使った国民投票だ。

この現実的ではないラストが何だか心に突き刺さる。
無理筋なのに、これで良かった気がする。
彼は、僅差で投票に勝利し総理を続けるのである。

もちろん、理屈で言うと、この影武者総理は間違っている。
でも、作者が言いたいのは、そういうことではなくて、政治家の仕事とは、そもそも何であったのかという問いかけなのだ。

だとしたら、今の日本は、これでいいのか?。
そんなことを思ってしまう。

例えば、経済なら、膨大な資金を投入しETF買いをし市場のパニックを安定化する。そのことで連鎖倒産などを防ぐ。国民全員に10万円程度の金をばらまく。金でじゃぶじゃぶにして、循環させて経済を回す。
ウイルス対策では、大規模なイベントを国が強制的に中止にする。もちろん、会場の費用などは国が負担。仕事はできるだけテレワークに移行。オリンピックは来年に延期。一時的に鎖国にする。

異常な時には、少しくらい異常な政策があってもいいと思う。
要するに、国民の安全を一番に考えて欲しい。
経済的に破裂して自殺する者や、ウイルスで死ぬ人がなくべく少なくなるように全力でやれる総理大臣を国民は求めているのだ。

日本国の首相は、今、その真価を問われています。
期待しております。


2020 3/22
令和2年 49冊目

無駄なことに時間を使い過ぎている。即刻、それを止めて時間の有効活用をしよう。



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時間 という のは、 誰 にとって も 命 の 断片 だ。
 人 は この世 に 生まれ てから、 誰 もが 時計 の 秒針 と共に   死 に 向かっ て 生き て いる。 そして 唯一、 時間 だけは 全 人類 に 平等 に 与え られ て いる。

だから、時間は大切なのだと本書は言っている。

私は、数年前から時間が足らぬが口癖になっていた。
1日、30時間くらい欲しい。
それで実践しているのは、睡眠時間を減らすこと。
無駄な時間を減らす。具体的には・・。
ネットを見る時間を減らす。テレビはほとんど見ない。用事はまとめてやる。
すると、平日でも4時間か3時間くらい余裕ができ
それで好きなことができている。


人生 は 好き な こと を やる ため に 与え られ て いる。
その ため には、 まず 自分 の 好き な こと に対して 素直 に なる こと だ。
 好き嫌い を 迷っ て いる 時間 は ない。 好き な こと は 考える もの では なく て、 感じる もの だ から だ。考え込む と 時間 が かかる が、 感じる のは ゼロ 秒 だ。

通勤時間、行列に並ぶ時間、無駄な会議に、上の人の意味のない演説・・・
私たちの周りには無駄が溢れている。

時間をどのように有効活用すべきなのか・・・
その空いた時間を自分の幸せの為に使うべきだと本書は言っている。


叱る時間にも触れている

叱る 時 に 注意 し たい のは、 昔 の 話 を 持ち出さ ない こと。
 単発 の 現在 進行形 で 叱る こと だ。
1 分 以上 叱ら ない と 決めれ ば、 命がけ で 叱れる。
 あなた が 命がけ で 叱れ ば、 相手 も 何 かを 気づこ う と する。

睡魔との闘いでの勉強についても触れている。
この発想は参考になる。

大人 に なっ たら、 1 分 以上 睡魔 と 闘わ ない こと だ。
 逆 に 目 が 冴え て くる こと を やる こと だ。
 眠い はず の 目 が 冴え て くる こと が、 あなた の 適性 なの だ。
 自然 に 目 が 冴え て くる よう な こと で、 人生 を 埋め 尽くそ う。

決断に費やす時間について・・・

決断 という のは 時間 の 経過 に 比例 し て、 現状 維持 に 落ち着く よう に なっ て いる から だ。
決断は1分以内で行うこと・・・
1分経過したら、やらない・・・

あらかじめ 1 冊 を 読む 時間 を 決め て しまう こと だ。
買っ た 本 は 面白い 部分 のみ を 読め ば いい。

これは賛同できん。苦労して到達できるものもあるからね。

「1 時間 程度 ください」 などと 言う 人間 に ろくな のは い ない。
 人 の 時間 を 軽く 見 過ぎ なの だ。

営業マンは遠ざけよう・・・。

自分 から 連絡 を 断つ こと が 別れ の 始まり なの だ。

今週の金曜までと言われたら、木曜までにやる。
行動は早く。締め切りギリギリは倍率がUPする。

名刺交換した後のフォローによって、人脈のレベルが決まる。
相手に敬意が払える人は、数は少なくても、きちんとした人と繋がっていく
これが人脈の本質

これは大切だ。メールアドレスがわかれば、その日のうちにお礼メールを、私は入れることにしている。それで印象はずいぶんと違いますよ。

成功者は、即日にアクション。

習い事で我慢は必要ない。
お金よりも我慢から脱する楽しい人生を送ることの方が意味がある。

この発想はなかった・・・

お金の貧乏はまだしも、時間の貧乏は致命的だ。お金持ちになりたかったら、まずは時間貧乏から脱出すること。ゆったりと考える時間が生み出せる。

入社一か月以内に辞めた新人は以外と後で成功している。

ちょっと・・・同意できん

脱サラした人もそうだ。失業保険を最後まで受給しているような人に成功者はいない。
早く行動。決断。

今月頑張れない人は、来月も頑張れない。
「明日から」「来月から」「来年から」という口癖は、地獄の人生の始まりだ。

「今やめると周囲に迷惑がかかってしまう」
はっきり断言しよう。
社長でさえ、今すぐ辞めて貰っても誰の迷惑にもならない。
その為に会社には取締役が複数いるのだ。

いやいや・・・。それは無茶・・・。

輝き続けたかったら、来年に逃げずに今をきちんと生きることだ。

一年間着なかった服は、まとめて処分する。普段着すべて勝負服にしておけば、毎日元気に生きていける。

準備ばかりしていると、準備それ自体が快感になって、本番を迎えることなく人生は終わってしまう。

生理的に合わないことをやる時間は、人生に用意されていない。

とことんストレス溜めて、じがらみは一瞬でぶった切れ。

時間をどのように使うかが幸せの鍵になるということでした。
いい本だと思います。


2020 3/21
令和2年 49冊目

ホステスの仕事術はビジネスの参考になるのだった。面白い。


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ホステスの技術をビジネスに取り入れようという企画本です。
ベストセラーになった本の漫画化。
わかりやすくタメになる。いい本でした。


ケース1、ホステスが上客に勝手に高級な飲み物を注文したケース

成績を上げようと、客がトイレに行っている間に
勝手に高級なボトルを注文し、客に激怒されます。

金持ちは金にルーズであると思われがちだが、それは違うと堀江さんは言う。
金に神経質。金を大切にしているから金持ちになったのだ。

さて、激怒した客に彼女はどうすればいいのか?
これが、このケースのポイントです


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悪あがきはNGでした。

ママが彼女に教えます。
そういう時は、誠心誠意謝罪した後に「また、ご用命があればお申し付けください」と一言付け加えるだけとする。
そのようにして、次につなげるのです。

去ろうとしている人の邪魔をしてはいけない。
むしろ、戻ってくる時の為に、その人に良い印象を与えるのが良い。

人間関係はすべて利得である。クライアントにメリットがあるかどうか。何が与えられるのか。
双方が利益を得る。それがビジネスだ。

それはホステスの客との関係と同じである。


ケース2、同伴にノーメイクで私服。客が馴れ馴れしく恋人のように・・・。

同伴は、ホステスの顧客獲得のための営為努力である。
彼女は、若いのでノーメークで私服。外で顧客と会う。

それは、顧客と彼女の距離を曖昧にし、客にボーダーラインを超えさせてしまう。
自分の恋人のように彼女を扱うようになり、色々と私生活に口出しをしてくるようになり

彼女は、ついにキレる!!

客は、自分が主人公になりたくて店に来ている。

プロは、職務として接客している。
だから、客は金を支払っている。

私服を着ていたことで、彼女はプロ意識が希薄になっていたのだった。

制服は、自分を律する鎧である。
自分を律するという意識こそがプロに必要な姿勢である。

制服を着るということは、仕事とプライベートの線引きである。
自分を捨て、職務にまい進する為のものだ。

客は友人ではない。相手との緊張感は大切だ。
ビジネスに私的な感情は介在しない。
自分の欲望を封じて、感情的にならない。

今回の教訓

プロが仕事をすることは、個人的な本性を封印して、いっさいを出さぬことをいう。


ケース3、客に依存するのは危険だ・・・

ホステスが、客と別れ話しを電話でしていた。
客は激怒した。
店にやってきて「豊胸手術の為に出した120万を返せ」とすごんできた。

かけがえのないモノは、それが何であっても費用を他者に依存してはいけないと堀江さんは言う。

子会社は上場しにくい。
それは親会社に依存しているからだ。
ビジネスにおいて、依存している事実は評価を下げる。

もう1つポイントがある
大切な話し、重要な要件はメールではなく直接会って話すべきだ

こちらが伝えたい情報と、むこうが聴きたい情報は違う
故に、誤解が生じる。トラブルになる。面と向き合って伝える方が誤解されにくい。



ケース4、ホームランバッターと3割打者。どっちがいい。

ビジネスにおいては、アベレージヒッターが評価される。
ある企業に依存しているホームランバッターは、当たれば凄いが、広く浅くの企業は、常に一定の業績を残せるからだ。


本書は、ホステスの客との関係を考察することで、それをどうビジネスに生きすかを考えることを目的に書かれたものだ。

私が、感じたのはプロ意識の大切さと、依存することの怖さだった。

これはホステスだけでなく、普通のビジネスマンでも使えるメソットのような気がします。



2020 3/20
令和2年48冊目
****





16歳の少年の恋の切なさ、弱さ、我儘が荒々しく積み上げられているような作品だった。


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16歳の少年と19歳の軍人の人妻の不倫を描いた作品。
20歳で早世したラディケの若々しい文体が、ぐっと迫ってくる秀作でした。

恋というのは、罪なものだなぁと思う。
年が若いせいか、それとも元来そういう性格なのかどうかはわからんが、まったく軍人の夫に対する罪悪感というものがない。

自分勝手で、無軌道で刹那的な恋。
19歳の人妻の少女の方がブレーキとなるべきなのに、逆に、彼の魅力に翻弄されて、まるで人形のように従属的なのだった。

世界大戦の真っただ中、夫は従軍中である。
そんな新婚の部屋に、少年は当然のごとく通う。
家主夫婦や、下の元議員夫婦にも関係がバレても気にしない。
というか、この議員は馬鹿である。
階下でパーティをし、人を集めて上の階の二人の秘め事を盗み聞きしようとするのだが、それが事前に露見して彼と彼女は音を出さない。人々が帰ったとたんに、Hをやりだすという何と申しますか、寸劇のような展開。

恋の駆け引きも何もあったもんじゃなく、少年の心は猫の眼のようにコロコロ変化するのです。
情熱的な恋の人であったかと思うと、無責任な子供になり、母親を慕う息子のようになったり、暴君のようにもなるのです。
20歳で死んだ作者だからこそ、実体験をベースにしている不倫小説だからこそ、そこにリアルな少年の心を閉じ込めることができたのかと思います。

恋する想いについて、こんな素敵な言葉がある。

  ひとつ の こと を 考え、 同じ もの ばかり 頭 に 描き、 それ だけを 熱烈 に 望ん で いる と、 その 欲望 の 罪深 さが 見え なく なる。

まさしく恋は盲目なのですよ。不倫が罪であるということも見えなくなってしまう。どころか、彼なんか戦争で死んでしまえばいいとか、本当に彼女に愛されているのは、君ではなく僕だよと伝えたいとか少年は独善的なのです。

この言葉も好きです。

 体 の 触れあい を 愛 の くれる お釣り くらいにしか 思わ ない 人 も いる が、 むしろ それ は、 情熱 だけが 使いこなせる 愛 の もっとも 貴重 な 貨幣 なの だ。

.16歳の少年の吐く言葉には思えない。

この気持ちよくわかります。恋愛の初期には、やりがちです・・・。


  両親 の 待つ 自宅 に 着く と、 僕 は マルト を ひとり で 帰ら せ たく なくなり、 彼女 の 家 まで 送っ て いっ た。 こんな 子供 っぽい こと が いつ までも 続き そう だっ た。

恋人の家と自分の家を行ったり来たりして、気がつくと朝方になっていて、新聞配達のおじさんに挨拶されて気まずい思いをしたりします。


子供 の 野蛮 さが、 肌 に 恋人 の 名 を 刺青 する 古い 感覚 を 甦ら せ た の だ。 マルト は こう いっ た。 「いい わ、 嚙 んで ちょうだい。 わたし に しるし を つけ て。 みんな に 知らせ たい の」

彼女の方が彼よりものめりこんでいる。不倫なのに罪悪感がまったくない。
軍人の夫と会うことも、彼にお伺いをするのです。


だが、 愛 とは 二人 の エゴイズム に ほかなら ない し、 自分 たち の ため に すべて を 犠牲 に し、 噓 で 生き て いく もの なの だ。 僕 は さらに 同じ 悪魔 に そそのかさ れ て、 マルト が 夫 の 帰宅 予定 を 隠し て い た こと を 責め た。

どんな権利があり、彼女を責めるのか。もはや、自分の立ち位置すらもわからない。これが恋なのです。彼女は自分のものであり、夫を勝手にオブジェか何かにしてしまうのです。


  愛 より 人 を 没頭 さ せる もの は ない。 怠惰 なのでは ない。 愛する 者 は、 恋愛 の ほか に 何 も し ない だけ だ。 愛 は 漠然と、 仕事 だけが 自分 から 人 の 気 を そらさ せる と 感じ て いる。 それ ゆえ、 仕事 を 自分 の ライバル と 見なし、 ライバル の 存在 を 許さ ない。 だが、 愛 という 怠惰 は 恵み 深い もの だ。 大地 を 豊か に する 柔らかい 雨 の よう な もの なの だ。

もう、何も見えていない。愛さえあればいいと思っている。
田舎で二人で暮らしたいとか二人は夢想するのです。
彼は16歳であり、両親の保護下にあるということも忘れている。

マルトは、やがて少年の子を妊娠する。

「ジャック と 幸福 に なる より、 あなた と 不幸 に なる ほう が いい」 と つぶやい た。   こうして 口 に 出す のも 恥ずかしい、 なん の 意味 も ない 言葉 だ が、 愛する 者 の 口 から 出れ ば 酔わ さ れ て しまう。

16歳の少年との恋に未来などないとわかっていても、このセリフが出てしまう。
これを言われた方は最高の幸福なのである。

こんなマルトに恋に焦がれる少年ですが・・・
妊娠中、田舎に行っている留守に、彼女の親友の外国人少女をマルトの新婚部屋に連れ込み
お酒を飲ませてHなことをするのです。
彼女のベットでするから興奮するという最低男です。
このことがバレます。家主が帰省先の彼女に手紙を書き
君の部屋が彼氏によって連れ込みホテルにされていると知らされますが
彼は、破廉恥な嘘でごまかす、彼女も信じてしまうのです。

私は、この浮気のシーンが何だか好きです。
少年は、妊婦の恋人よりも、一瞬、美しい外国人の少女に惹かれるのです。
これが若さというものでしょう。
倫理観も何もなく、本能のままに突進する。
平気で嘘をつく。ごまかす。マルトを手放すつもりは毛頭ないのです。

愛するマルトが子を産んですぐに死んでしまう。


マルト!   死 の あと には 何 も ない こと を 願っ て いる のに、 僕 の 嫉妬 は 墓 の なか まで きみ を 追いかけ て いる。 自分 の い ない パーティ で 愛する 人 が 大勢 の とり 巻き に 囲ま れ て いる のが 耐えがたい のと 同じ こと だ。 僕 の 心 は まだ 未来 の こと なんか 考え ない 年齢 だっ た。 そう だ、 僕 が マルト の ため に 望ん で い た のは すべて を 消し て くれる 無 だ。 いつ の 日 か また 一緒 に なれる もう ひとつ の 世界 なんか じゃ ない。

このラストシーンは切なすぎた。
大切な人を失った絶望は、世界の終わりと同じ意味。
音も臭いも感情も言葉も、すべて無になる。
そんな君に安直な慰めは必要ない。
好きなだけ絶望するが良い。
・・・と、この少年に言いたくなるような作品でした。

2020 3/18
令和2年 47冊目
*****

肉体の悪魔 (光文社古典新訳文庫)
ラディゲ
光文社
2013-12-20


この世の中、嘘でもないとやってけない。


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帝政ロシアの時代、人民は貧しかった。

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これはある下宿の話しである。
そこには、売春婦、詐欺師、泥棒、職人、死にかけの女、役者などの貧乏人が集団で暮らしていた。


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強欲な家主。その妻は、下宿人の泥棒と浮気をしている。
その泥棒は、家主の妻の妹に恋をしていた。

そんな下宿に一人の聖人のような老人がやってきたことから、物語ははじまる。

泥棒から盗品の時計を買った家主が、役者が良いことをしていたのを見つける。
きっと、いいことがあると褒めてやる。
いつ?と聞かれるが困る。
「あの世でさ・・・善行はあの世で報われるんだ」
今、金で欲しいよ・・・
「人の親切は金では換算できないんだ・・・」と逃げられる。

ここに物語の鍵があると感じた。
この貧しい世界は「どん底」だ。いつ飢え死にするかわかったもんじゃない。国民が皆、餓えて死にかけている。現世での幸せなんて望めない世界なのだ。

泥棒は、彼らの中では、生活がましだった。
死にかけの妻がいる1日中働いている職人に話しかける。

「仕事が楽しみなら人生は極楽。だが、義務なら人生は地獄だぜ!」

職人は顔を歪め「恥を知れ」と言う。

「恥や良心なんてもんはな、金や権力を持っているもんが求めるもんだぜ」と笑うのだった。
誰もここでは、そんなものは気にしてない。生きるのに必死なのだ。

役者が大切な詩の言葉を忘れたと頭を抱え込んでいると・・・
じいさんが・・・

「大好きなものを忘れるようじゃいけないよ。人の魂は大切なものの中にあるのだから・・」

このセリフがいい。爺さんは、このひねくれた貧民たちの心を聖人のように日照らしていくのだった。

そんな時、泥棒に家主の妻が提案する。
「亭主を殺してくれ。そしたら妹と駆け落ちさせてやる」と。

亭主を棺桶に、俺を監獄にやっかい払いかね。
と泥棒は怒る。

売春婦と家主の妹ナターシャ―が話しをしている。この妹は姉とは反対で優しい人。
売春婦の話しは嘘ばかり・・・
「嘘のほうが・・・、楽しいんだもの・・・現実よりもずっと・・・嘘がなかったら人生は辛いよ」
このナターシャ―の台詞もいい

お爺さんも言う
「ここぞという時に、人に憐みをかけてやることは素晴らしい」と
昔、別荘番をしていた時に、餓えた農民が押し入って来たのだが、彼らを警察に突き出さず
その冬、そこで一緒に過ごしたと話す。
「牢獄は人に何も教えてはくれないが、人間ならいい事を教えてあげられるよ」

ありのままの真実は、人の為になるのかという話しになる。
じいさんは、真実の国を信じていた人の話しをする。その国は理想的な国だった。
しかし、偉い学者に聞くとそんなものはないと言う。
彼は暴れまくり暴行し、最後は絶望して死んだ。
真実は、必ずしも人のためにはならない。

「この世の中は嘘でもないとやっていけない人たちもいる・・・」

どん底にいる人たちには、嘘であっても慰めが必要だというのだ。

この話しのピークはここだった。

この後、泥棒はナターシャに告白する。Okを貰うが、姉と家主は彼女を解放せずにイジメる。
泥棒は家主を殴り殺し。その妻は殺人教唆で牢獄。泥棒も逮捕されシベリア行き。ナターシャも精神を病む。
老人は姿を消し、ラストシーンでは、あの優しい役者が首をくくって死ぬという。
悲劇の輪島塗のような物語なのだ。

でも、聖人のような老人の皆に対する優しい気持ちが物語のすみずみにまで浸透していて、読後感はそんなに悪くない。
名作を漫画で読むシリーズの中では、これは良く出来た部類だと思う。
ゴーリキーはやはりいい。

2020 3/15
令和2年 46冊目
*****


マンガで読む名作 どん底
横井謙仁
日本文芸社
2013-12-13

どん底 (岩波文庫)
ゴーリキイ
岩波書店
1961-01-01


わかりやすく良いのだが、少し時代錯誤なようにも思える。


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海外において道徳は「キリスト教」を背景にしている。
しかし日本は「無宗教」である。



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新渡戸稲造は、日本にも道徳教育があるという。
それは「武士道」だった。


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本書は、「武士道」についての解説本である。
正直に言うと少し時代錯誤を感じた。

義・・・フェアプレー精神。
勇・・・正義を貫く心。
仁・・・思いやり。
礼・・・優しさを形にしたもの。
誠・・・言ったことを成すこと。
名誉・・・外聞、面目。裏を返すと「恥」を知るということ。

士農工商という身分制度についての記述が面白かった。
モンテスキューは、貴族を商業から締め出すことは、権力者に富の集中をさせない良い政策だと言っているそうである。
ローマ帝国の衰退の1つに、特権階級の富の独占がある。貴族階級に富を独占させると、ろくなことがないと言っている。

武士は「どう美しく死ぬか」を念頭において生きていたらしい。
それは「何のために生きるのか?」という哲学に繋がると本書では言っていた。

ただ、この武士は正義の人なのであるが、寺小屋の先生のために収入は少なく
奥さんに内職をさせていた。
そんな苦労させている彼女のことを「愚妻」と呼んだりすることに違和感を感じた。
自分の半身である妻を下げて言うことで自分も・・・という相手に対する尊敬の態度らしいが・・・
問題発言だと思う。

先生の借金を肩代わりするのはわかるが、妻の内職の金を奪っていくのは暴力亭主のようだ。
貧乏なんだから、大きなことは言わない方がいい。
妻が妊娠していると知ると、武士の生命である刀を売って格好をつける。
「魂はここにある」と胸をたたくシーンは感動すべきなのだろうが、そもそも・・・。

「忠義」についての筆者の考えには共感した。
国家や権力者が「忠義」なる言葉を使う時は危険である。
これはその通りである。
それは国民の権利を制限する時に使われるからだ。

武士は独自の「道徳」を確かに持っていた。
道徳的なしっかりとした規範だった。
それは素晴らしいと思う。
だが、面目にこだわるあまりに、商人を無礼うちにしたり。妻に偉そうにしたりと弱い者イジメもしていたことは問題である。

その正義を貫くとか、優しさという「心」は大切だが、パワハラ的なものは参考にする必要はないと思う。

2020 3/14
令和2年45冊目
***



武士道 ─まんがで読破─
バラエティ・アートワークス
イースト・プレス
2013-06-28



ゲーテの名言集である。ファウストなどの有名な本から選ばれた言葉は興味深い。


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一日 の 終わり に、 その 日 に 出合っ た 出来事 を 心 の 中 で 整理 する こと だ。   良かっ た こと は、 ただ 漠然と 幸せ な 気分 に ひたる だけで なく。   悪かっ た こと は、 ただ 感情的 に 否定 する だけで なく。   一つ 一つ の 意味 や 価値 について、 自分 なりに 考える こと だ。   そう すれ ば 次 の 日 には、 ちょっと だけ 新しく なっ た 自分 と なっ て、 新鮮 な 心持ち で 新た な 一日 を 始め られる。 〔遺稿〕



 猿 と 人間 の 違い は、 一つ だけ だ。 人間 は、 生き て い て 退屈 を 感じる。 猿 は 感じ ない。   人間 は、 生き て いる だけでは 満足 でき ない の だ。 なんと 贅沢 な 生き物 だろ う か。 〔遺稿〕


 人 は、 役立つ 人間 しか 評価 し ない。   だから、 他人 の 評価 を 喜ぶ のは、 自分 で 自分 を 道具 扱い する こと で ある。 〔格率 と 反省〕

人 が、 うっかり 過ち を 犯し、 あるいは 思い違い で 誤っ た 話 を する と、 誰 もが それ に すぐ 気づき、 非難 する。   ところが、 悪意 によって わざと 過ち を 犯し、 わざと 嘘 を つい ても、 たいてい 誰 も 気づか ない。   人 の 目 は、 悪意 には 簡単 に 手玉 に 取ら れ て しまう もの で ある。 〔芸術 と 古典〕

 

持っ て いる ものの 本当 の 価値 が 解っ て い なけれ ば、 それ を「 所有 し て いる」 とは 言え ない。 たとえ それ を、 どれほど 好き 勝手 に 利用 できよ う が、 それ は 自分 の 所有物 に なっ て い ない。


 男 が 立派 な 紳士 に なる 方法 は、 ごく 簡単 で ある。 それ は、 良い 女 と 付き合う こと だ。   なぜなら 男 は、 良い 女 の 前 では「 良い 男 の 振り」 を し た がる。 その「 振り」 の 積み重ね が、 知ら ず 知ら ず の うち に、 本物 の 品性 を 磨き 上げ て いく から だ。 〔親和力〕

  男 が 立派 な 紳士 に なる 方法 は、 ごく 簡単 で ある。 それ は、 良い 女 と 付き合う こと だ。   なぜなら 男 は、 良い 女 の 前 では「 良い 男 の 振り」 を し た がる。 その「 振り」 の 積み重ね が、 知ら ず 知ら ず の うち に、 本物 の 品性 を 磨き 上げ て いく から だ。 〔親和力〕


「うまい 話 に 騙さ れ た」 と 嘆く 者 は、 他人 に 騙さ れ た のでは ない。 自分 で 自分 を 騙し た の だ。なぜなら、 自分 の 愚か な 欲望 が、 その「 うまい 話」 に 乗せ られ て、 自分 の 心 に「 信じろ」 と 命じ た からで ある。


あらゆる盗人の中で、もっとも質が悪いのは、愚かな人間だ。
彼らは、金品は奪わない。しかし、人の貴重な時間と快い気分を奪っていく。

人はも聞く前から知っている話しなら真面目に聞く。しかし知らない話をされると、耳を傾けない。
知っていることを確認するのは楽だが、知らないことを覚えるのは辛いからである。

真実を語っても、過ちを語っても、世間の反応は同じである。必ず反論してくるのだ。

行動することが全てなんだ。懸命に何かに取り組んでいる時の充実感こそが、幸福なのだ。
結果など、ましてや名声など、どうでもよい。そんなものはオマケである。

美しい虹でも、15分も消えずに空にかかっていたら、誰も見上げ続けようとはしないだろう。感動とは、短命なものなのだ。


どんな些細なことでも、人が何かをすれば、きっと誰かに影響を及ぼす。たとえ髪の毛一本でも、存在すれば影ができるように。

人は、ただ生きるのではない。満足するために生きるのだ。だから、本当の満足を得た瞬間、人はきっとこう叫ぶ。
「時間よ、とまれ!。今この瞬間は、あまりにも美しい。生き続けることでこの瞬間が過去になってしまうなら、いっさ私は、この瞬間の中で息絶えたい」と。


欲しいものを手に入れた「未来の自分」を空想するだけで、人の心は一瞬でも欲望から解放される。空想力があれば、頭の中だけでも幸せになれる。それだけでも悪くはない。


気持ちがすさんで暗闇に心が包まれると、他人の不幸を見て喜ぶことしか興味がなくなる。他人の幸福どころか、自分の幸福さえも求めなくなる。だから、他人の悪口をやたらと述べ立てる者は、もはや自分の幸福を放棄している。

全てのことを知って全てのことができる人間はいない。けれど、全てのことに興味があり、全てのことを知りたがる人間はいる。なんと素晴らしい好奇心と探求心だろうか。けれど、その者は果たして幸福だろうか?。

どれほど丁寧に説明しても、自分の意見を主張すれば、必ずどこかから不平や不満の声が挙がる。だが、それが自然であり、それで良いのだ。むしろ全員には指示して貰えないからこそ、その意見には個性があり、意味がある。
誰からも反論されない意見など、中身が空っぽの言葉の羅列に過ぎない。

原因を見つけ出すよりも、解決策を見つけ出す放火大変だ。でも、人は楽をしたがる。だから問題が起こると責任者の追及ばかり躍起になる。

愛されること、愛すること。叫ばずにはいられない。
「神よ。この2つは、なんという幸福だろう!」

もっと光を!(ゲーテ最後の言葉)

*気に言った言葉をピックアップしました。


2020 3/14
令和2年44冊目
****


超訳 ゲーテの言葉
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
PHP研究所
2013-11-15












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