武藤吐夢@ BLOG

令和になって読んだ本の書評を書いています。 毎月、おすすめ本もピックアップしています。

2020年04月

「貨幣とは鋳造された自由である」っていう有名な文句を見つけられて嬉しいが退屈な話しであった。


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本作は、ドストエフスキーの監獄ルポである。
登場人物が多く、1つ1つのエピソードは平板であり情報が後へ後へと押しやられていくようなイメージがあり退屈だった。
当時のシベリアの監獄は、日本のともアメリカのとも、かなり印象が違う。
すごく自由に思えた。
厳しい集団生活や臭い飯、点呼等のシーン強制労働的なシーンも少なかった。
酒を飲んだり、女を買ったりもできた。そんなことは日本では不可能だ。
なのに、脱獄したのは最後の2人だけ、それもすぐに逮捕された。
というのも、シベリアという立地が関係してくる。

シベリアってどんなところなのか?。
ロシアのヨーロッパ部分の東端、ウラル山脈を西の境界とした太平洋岸まで続く広大な土地と解説にはある。つまり僻地であり、地元住民には密告者も多く。そんなところを村の人間以外の人が歩いていると目立つ。足に鎖がついているのである。

妻殺しの罪で服役していたゴリャンチコフの死後に見つけた記録という形をとっているのだが、作中、この妻を回顧するシーンもなくば、罪の意識を感じている場面も現れない。何か変だった。読んでいくうちに、そういう違和感を感じた。
解説によると、ゴリャンチコフ=ドストエフスキーなのだそうだ。
ドストエフスキーは、シベリアで監獄生活を4年していた。ペトラシェフスキー事件に関わって逮捕され、1850年から1854年までの四年間オムスク要塞監獄で過ごした。
つまり、自分の実体験をベースにしているのだ。だから、リアルなのである。
ということは、当時の記録とも言えるのであり、民族学的な資料でもあるのである。

監獄の中で囚人たちは冗談を言いあい、ときには罵り合ったり喧嘩もする、酒を飲み女も買う、小銭を稼ぐ内職を持っている。
日本の刑務所とは、かなり違う。

本書に、ストーリーというものはほぼなく、ただ、たんに監獄の情景や囚人たちの人物がエピソードとともに紹介されているだけである。それが延々となされるため、読み続けると疲れる。平板と言ったのは、このことだ。
その囚人たちの描写だが、確かに粗暴である。しかしながら、常に暗い調子を帯びているわけではない。したたかな生活力、ときには底抜けな明るさや人間味さえ感じさせるところがある。
貴族階層と庶民の分断というモチーフもあったり興味深い。

人間味の部分を少し例を出して説明すると、こんなシーンがある。

子供をおびき寄せて・・・斬り殺したというのだ。・・・それまで男の冗談に笑っていた房の連中が、・・・いっせいに罵りだした。・・・・囚人たちが罵ったのは別に義憤からではなく、ただ単にそういうことをしゃべってはいけない・・・。
囚人たちは足かせを着けていたが、監獄の中を自由に歩き回って、悪態をついたり、歌を歌ったり、自分の仕事をしたり、パイプタバコをふかせたり、酒まで・・・夜中にはカード賭博を・・・。


この自由度はどこからくるものなのか、それは金が流通しているからである。
「貨幣とは鋳造された自由である」っていう有名な文句があるが本書からである。
まさしく監獄なのに金がものを言う世界。外と同じだ。ときに、金は人間の自由度を広げる効果があるのだ。



金は監獄の中で恐るべき意味と力を持っていた。・・・何がしかの金を持っている人間は、一文無しに比べて味わう苦しみが十分の一ですんだ。

ドストエフスキー自身は金持ちでかなり優遇されていたが、それでもこの生活の不自由さは耐え難いものを感じていた。それを囚人の一人に代弁させているシーンがここだ。

俺たちはここで何をしているんだろうね?。生きているのに人間じゃないし、死んでいるのに死人じゃないし・・・。




最後に、印象に一番残った言葉を紹介したい。

それにしても、人間は生きられるものだ!人間はどんなことにでも慣れられる存在だ。わたしはこれが人間のもっとも適切な定義だと思う。

2020 4/29
令和2年67冊目
****


死の家の記録 (光文社古典新訳文庫)
ドストエフスキー
光文社
2015-09-25






探偵は死を回避するものだが、彼女たちは死を引き寄せる。そのドライな視線が怖い。




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親友の名前はトランジで、私はピエタ。
人類最後の「名探偵と助手」だ。
最強最高の女子バディ物語。

という本のクレジットに騙された。
作者の藤野さんは、芥川賞作家だ。そんな彼女が探偵小説?。
ということで読んでみた。もちろん、ミステリーとして読んだが、裏切られた。

はっきり言う。ミステリーとしては、本作はクズだ。ミステリーではない。断じてない。
しかし、私はこの作品に*****を送りたい。つまり、最高級の評価だ。
その説明とともに、物語の紹介をしようと思う。
とにかく久しぶりに興奮した。いい作品だ。

まず、主人公の二人。「ピエタとトランジ」について

ピエタっていうのはね、慈悲とかいう意味で、十字架に架けられて死んじゃったキリストをね、お母さんのマリアが抱いている像のこと。

「・・・そういうのトランジっていうんだってさ」
「そういうのって?」
腐敗した死骸の像を設置した墓碑だよ」

名前の出典は聖書にあるようです。
このあだ名が登場人物を象徴している。
死を招き寄せる探偵トランジなのだ。

トランジは探偵だ。しかし、死亡事件を多発的に発生させる性質を帯びている存在でもあった。

探偵とは本来、「事件」を解決する者。死を回避すべく働きかけるものであるはずだが、彼女が「事件」に介入すると事件は解決するが、余計な死人が出てしまう。
そんな二人のバディの高校、大学、医師、結婚後、探偵時代、中年、老年期を時系列に描いた物語である。探偵小説の形をとっているがミステリーではない。何か得体の知れぬ読み物とでも言っておこう。

注目すべきは、二人の「死」との距離感だ。
ピエタなど、最初からドライで他人事だった。まるで、コンビニに行き🍙を買おうとしてなかった。じゃ、次の店にという・・・軽い感覚で死を受け流していく。その感覚がゾッとする。読んでいる時、ずっとざわざわしてて違和感を抱え込まなくてはならない。つまり、かなりストレスのかかる読書になるということだ。
それから、そういう物語だから戦争映画さながらの死人の数となる。数々の理不尽な死が累々と彼女の背後に積み上げられていくのだ。

ピエタが30代になり結婚するのだが、その時の夫との会話が印象に残った。

「ときどき人生にはなんの意味もないって顔しているね」
「そうかな」と私は答えた。
まぁ、実際、人生には意味なんかないのかもしれない」と夫は言った。「みんなそれじゃやってられないから、なにか意味ややるべきことがあると仮定して、それでうまく自分を騙して生きているだけなのかも」

コロナになり緊急事態宣言で、家に監禁状態に近い状態でいると、自分のことを無価値だと思ってしまう瞬間がある。自分なんて替えのきく存在だったんだと思ってしまう。そういう心理状態で、この言葉に触れると「人生の意味?」を求めること自体が欺瞞のようにも思えてくる。ただ、生きている。それでいいじゃないか!!。

世界中に殺人衝動がウイルスのように蔓延していく。それが二人の老年期である。

世界中で殺人がインフルエンザみたいに蔓延していた。ひどいことがそこら中で起こっていた。でも、私にはそれがごく自然のなりゆきのように思えた。だってそれまでも殺人なんてちっともめずらしいことじゃなかったし、戦争は長い雨のように止まらず、ひどいことはずっと起こり続けていたからだ。

 トランジが関わると死人が出る。その関係者の中で森ちゃんという医師がいるのだが、その人もトランジと同じ体質になっていき、彼女に関わると人々は嘘のように死んでいき、ピエタの両親は森ちゃんのせいで悲惨な最後をどけるのだが、それを二人は、さも当然のように受け流していくところが怖かった。
 死を招く体質の感染?。死の拡大・・・。世界中に感染していくのだ。

 死に慣れてしまうという感覚。
 これが怖い。
 何でもそうだが、慣れることは良いことだけでなくマイナスの面もあって、感覚の不感症みたいになることもある。そうなると正しい判断が下すことはできなくなる。
 殺人すら、罪の意識なく実行されてしまう。
 このシーンは怖い。ある女の子が男を殺してしまった。

「みんな、ごめんね」ダフネが謝罪した。「ジョーイ、大きかったから、外に出して埋めるのけっこう大変だったね」
「いいよ」全員がほぼ同時に言い、ダフネに向かって片手をあげた。
最近の若者は、こういう考え方をする子が多い。とにかくなんでも受動的で、殺人も自然現象みたいに受け入れる。

 これ根本がすでに歪んでいる。何故、殺人を非難しないのか?。殺人が日常になると、こうも倫理観が崩壊していくものだろうか?。そう言えば戦争で人を殺しても基本は罪に問われない。そういう感覚なのか?。死は記号化していくとでも言うのか。意味を失くすのか?。

「昔は殺人が起こると警察が捜査してね、犯人を捕まえたもんよ。そういうことが二度と起こらないように、見せしめのためにね」
でも、殺人はなくならなかったんだよね」ユーリアが言った。悲しみとか怒りとか、そういうものは彼女の口調からは一切感じ取れなかった。ただ事実を述べているだけだった。「それどころか疫病みたいに広がって、世界を滅ぼしつつある。疫病って何の事か知らないけど」
 最後は、男を拉致する女たちまで現れる。
 理由は子孫を後の世に残すためだ。男は攻撃的で、すぐに死ぬので数が少なくなっているのだ。
人はすぐに殺されるので、わざわざ産もうとは思わない超少子化のデストピア世界なのだった。
 この物語は色んな問いを、私に投げかけてくる。
 

2020 4/26
令和2年 66冊目
*****


ピエタとトランジ <完全版>
藤野可織
講談社
2020-03-11





この書記はダメダメ男なのである。これで世の中を渡っていけるわけがないのだ。


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書記バートルビーは、これまでに読んだことのない作品だった。
仕事が忙しくなったので、書記を一人追加募集した。
バートルビーという男で、最初はきちんと働いていた。
だが、いきなり「わたしはしない方がいいと思います」と断ってきます。
これは遊びではない。仕事なのである。なのに、それを拒絶するのだ。
働かないのである。
上司で語り手である私は、びっくりしてしまう。
仕事が忙しくて雇ったのだ。なのに「わたしはしない方がいいと思います」と何もしないのだ。
つまり、仕事をボイコットしたのだ。

書記の仕事は、書写だから退屈でやりがいがない。だけど賃金を貰っているのだから働くのは当然なのである。上司の私は困り果ててしまう。
さらに、休日に事務所に行くとバートルビーがいた。どうも住んでいるようなのだ。それも無断で゛だ。だから出て行って欲しいと頼むのだが、バートルビーは「そうしないほうがいいと思います」と言うことを聞かない。これは建物の不法侵入だ。でも、優しい私は説得しようとする。だが、バートルビーは聞く耳を持たない。当然、バートルビーは解雇だ。働かない。事務所に勝手に住む。当然、そうなるがバートルビーは、私を無視する。私の要求に答えない。
私は、事務所を引っ越しして彼から逃げるが、次に借りた人から、まだ、バートルビーが事務所に居座っていると聞かされる。私は親切にも自分の部屋に彼をしばらく引き取ろうとするがバートルビーは拒絶する。
バートルビーは、すべての物事に対してnoと言う。
警察に逮捕され、刑務所に行くが食事を食べない。
「そうしないほうがいいと思います」と拒絶し、最後は餓死してしまう。

さて、この男は何のなのか?。
どうして、死ぬまで頑なにnoを突き通したのか?。
この短編の舞台はウォール街。それは資本主義を象徴しているということなのだろうか。
拝金主義に対してのnoであるともとれないことはないが、それだと、そういう会社の募集に応募することがおかしくなってくる。この上司は理不尽な人物ではない。どちらかと言うと親切な人だった。
私が、私が、私がと読んでいるうちに、バートルビーを雇っているのは自分であるような錯覚に陥る。

何を彼は拒んでいるのか?。
単に、理解できない価値観を有している変人なのか?。
世代間ギャップなのか?。
何の説明もないままに、すべてを拒絶し死んでいく。この不気味さに首まで浸っていると、何かよくわからないザワザワした感覚を感じる。でも、これが何かはよくわからない。

もう一遍の中編「漂流船」は奴隷差別みたいな話しなのかな。
今いち、ピンとこなかった。


2020 4/24
令和2年65冊目
*****







インディアンのハーフの悪役の死に方が酷すぎる。どうしても、そこが気になった。



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たぶん、大人の見ている世界と子供の見えている世界は、かなり印象が違うんだと思う。
大人はわかってくれないと子供は言うが、元々、見えている物が違うのだから、わかるわけがないのです。

この物語でトムが軍人に憧れている話しをする。その後に、もっといいのはインディアンだと言う。バッファローを狩り、戦いに明け暮れ、いつの日にか大酋長になりたいと願うのだ。

しかし、現実のこの頃のアメリカはインディアン差別があった。
本作に登場する悪役のインジャン・ジョーの死に方は酷い。
というか、インディアンだから、インジャン・ジョーってのも酷い。
トムが最後のほうで洞窟で迷子になる。二次災害を防ぐため町で鉄の蓋を洞窟の入り口にしたため、そこに隠れていたジョーが死んでいたというのだ。
街の安全のためなら、人が死んでも仕方ない。ジョーみたいなインディアンの悪人なら当然なのだという考えが見て取れる。この町の独善性は何なのだろうか?。すごく違和感を感じる。

解説に、こんな文章があった。

共同体で正しいとされていることは、本当に正しいのか。違う場所に移動すれば、全く違う価値観があるのではないのか。
 これは子供か大人かでも違ってくる。人種によっても違う。日本人は、インディアンを差別なんかしない。

 ジョーは白人に対して憎しみを抱いていた。
 それは彼の吐いたセリフからも伺える。

あの野郎、俺を馬用の鞭で打たせやがったんだ!。牢の前で、馬用の鞭で!。二ガーみたいに!。村中の人間が見ている前でよ!。馬用の鞭だぞ!。わかるか?。え?。

トムの憧れていたインディアンは少しも理想的ではなかった。差別の対象で厳しい立場にあったのだ。

この物語で、もう1つ印象に残ったのはトムのしたたかさだ。

ペンキ塗りの仕事を友達に押し付ける時に使ったペテンは詐欺師のそれである。
そんなトムは他の二人と家出する。大人たちは心配する。戻って来た彼らを、さほど叱らない。
なのに、くだらないことで大人たちは叱る。すごい矛盾を感じた。

名言もあった。

何か欲しくてたまらない気持ちにさせるには、それを手に入れにくくさせてやればいい。
何かをしないと約束することは、まさにそのことをしたくてどうしようもない気持ちにさせる最も確実な方法である。

読み前のイメージと少し違ったが面白かった。


2020 4/21
令和2年冊64目
****











不気味だ。人食い人種や黒人奴隷の死よりも、人間の病んだ心が怖い。


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 作者のコンラッドが船員であったのは本書を読むまで知らなかった。
「地獄の黙示論」という1979年公開のアメリカ映画。フランシス・フォード・コッポラによる戦争映画の原作が本作らしい。
 本書は、戦争もベトナム戦争も関係なくて、もっと、前のアフリカが暗黒大陸と呼ばれていた時代の話しだ。植民地時代であり、アフリカはイギリスとフランスの勢力に分断されていたのだが、本書の舞台。ジャングルの奥地。コンゴはベルギーの植民地であり、象牙の売買を行っていた。
 その植民地支配の闇。黒人奴隷を過酷に扱う様や、象牙取引のことがモチーフの社会小説としても読めるが、何かそれだけではないようにも思えた。
 主人公はイギリス人の船長であり、彼がコンゴの奥地で現地の監督者をしているクルツという人物の救出に行くという話しなのだが、ジャングルの奥地は暗闇で、黒人奴隷たちは死にまくるし、彼らの食糧の河馬の肉は腐るし、現地人に襲撃されるのだった。
 クルツは奥地で象牙を収集していたが、精神も肉体も病んでいた。周囲の部族たちから慕われていて王のような風格である。ジャングルの奥深くで行われている闇取引。奴隷の死。クルツの精神の闇。それはどす黒く気味が悪かった。

 全体的に、白人優位な黒人差別的な傾向が強い。
 舟には黒人たちがいて、彼らは人食い人種だった。その描写が印象に残った。

連中は河馬の肉を持っていたんだ。ただ、これが腐り始めてね。魔境の神秘の臭いが鼻につうんときた。

密林の描写もおもしろい。すごく不気味だ。

前方でちゃんと開けていくが、舟の後ろでは次々と閉じていくように感じられた。まるで密林が両側からすっと歩みよって、俺たちが帰れないようにしている・・・。

森は仮面のように動かず、監獄の閉ざされた扉のように重く、秘密の知識を隠し、辛抱強く何かを待ち受けながら、沈黙でこちらを拒絶しているように見えた。

やっと、コンゴの奥地でクルツと会うのだが・・・
彼は不気味な感じだった。その描写もおもしろい。

しかし、彼の魂は狂っていた。人間の手のつかない原始の自然という魔境のただなかで、たった一人いる間に、彼の魂は自分自身を覗き込んで、何ともはや!。狂ってしまったんだ。

「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」というニーチェの言葉を想起した。
その闇は奥底で鈍く光っていて、近づくと正気の人も狂気に導くのである。
社会的な事柄の闇よりも、クルツの心の闇の方が不気味で怖い。
差別や虐殺よりも、生きている狂った人間の心の方がよほど怖い。
そんなことを思いました。


2020 4/19
令和2年63冊目
*****


教育の問題に、エビデンスを示し、何が有効なのかを示すという楽しい本だ。


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ベストセラー、「学力」の経済学の漫画版だ。
かなり面白い。
漫画にしたら難解だが、よく読めば理解できるし、教育の問題なので誰にでもわかると思う。
東大に子供を入れましたとか、色んな本が売れているが、アレはその人の成功体験であり、この本は、そういう一部のレアケースではなく皆の参考になる話しなのです。

質問形式に、答える形になっている。
すべてに、エビデンス(科学的根拠)があり納得がいく。
漫画なので説明が雑なところがあるが、そこは仕方がない。

気になったところだけ・・・。

Q、子供を褒美で釣っていいのか?

テストで良い点とると御褒美   アウトプット
本を1冊読むと御褒美    インプット

さて、どっちが有効か?

人間は遠い未来においては賢い選択ができるが、近い未来においてはできないそうである。
今の5000円と、一週間後の5500円。たいていの人は今を選んでしまうらしい。
人は、目の前の利益を優先する傾向がある。

だから、この場合、具体的な本を読むが有効なのである。
テストで良い点は、どうしたら良い点がとれるのか具体策が示されていないのでイメージしにくい。

答えは、ご褒美は有効で、インプットが良いとなる。

Q、褒めるべきかどうか?

自尊心と学力は相関関係(aとbが同時に起きている)にすぎず、因果関係(aという原因があってbが生じる)は逆という結果が出ている。

自尊心が強いから学力が高いのではなく。
学力が高いから、自尊心が強いなのだ。


だから、むやみやたらに褒めても根拠のない自信過剰になるだけでマイナスとなる。
どう褒めるのか?
答えは、能力を褒めるはX。努力を褒めるが正解である。

努力を誉められた子供たちは、もっと努力するようになるのだ。
これが科学的根拠である。

Q、テレビやゲームは制限すべき?
A、1時間程度OK。長時間は負の影響。

Q、優秀な人の近くにいると好影響を受ける。
A、もともと優秀な人間は好影響を受けるが、そうでない人は自信を喪失する。

Q、共学と男女別学どっちが良い
A、男女の特徴差があるので別学がいい


・非認知能力の大切さ
高校で良い成績を取る過程で獲得した非認知能力(まじめ、先生との関係が良い、計画性がある、やり抜く力があるなど・・)は高校を卒業した後も、彼らを成功に導いた。
「自分の能力は生まれつきのものではなく、努力によって後天的に伸ばせる」ということを信じている子供は「やり抜く力」が強いことがわかっています。
自制心とやり抜く力が大切だ。
何かを繰り返し継続しやり遂げることで向上する
心の持ち方が大切

自分の能力は生まれつきのものではなく、努力によって後天的に伸ばすことができるのだと信じることが大切。
逆に、自分はできないと思うと、その通りになってしまう。

非認知能力は、人生のかなりの長い期間にわたって、計り知れない価値を持ちます。

おもしろい本だった。
原本を読んでも良かったと後悔。



2020 4/18
令和2年62冊目
*****


まんがでわかる「学力」の経済学
中室 牧子
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2018-12-13

私小説だと聞いたが・・・、この人に女性を愛する資格はあるのか?。


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西村さんと言えば、芥川賞をとった時のインタビューが強烈だった。


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鬼畜キャラで売っているのだが・・・。
私小説だということは、つまり、自分のことなので・・・。
相当の変人だと思える。

いくつかの短編により構成されていて、正直に言うと惹きつけられた。
おもしろい小説です。
「悪夢」という鼠が主役の話しは計算された構成だったが、他の作品は無軌道に言葉を羅列している。感情のままに言葉という弾丸を詰め込んで目標を定めずに乱射したという感じの荒々しさが、この作品の魅力なのだ。故に、しまりがなかったり、話しの中に別の話しがあったり、まるで雑談か何かのように話しが飛ぶ場面もあった。
破壊力はすさまじい。一度、読み始めると目が離せなくなる。主人公に1ミリも共感できないし、少しも羨ましいとか感情移入すらしたくないのだが、何だかよくわからないパワーが内在していて、まるでガソリンか何かを定期的にぶちこんだように爆発している。噴火に近いかもしれない。

本の印刷所のような所で肉体労働をしていた時の社員や仲間に対する態度。意味不明だ。
喫茶店の女に一目ぼれする純粋さと、フラれた後に紹介された女に対し暴言を吐く態度。
女を性欲の処理道具のように考えているのか、傲慢さや支配したいという欲が見え隠れしている。
学歴に対するコンプレックスが文字の中からあふれ出し、言葉にできない怒りで蒸されたようになっている。
恋人の昔のアルバムを見て一人で興奮している姿は、変態性欲者だし、子供の頃の乞食のような彼女の姿で萎えたと怒るのは自分勝手すぎる。勃つか、勃ないかだけが人生なのか?。

恋人が病気になり寝込んで、看病をするも急に嫌になってキレるところは鬼畜だ。
病気の人に向かって悪態をつくなどありえない。
人間としての何か大切なものが欠落しているように思えた。そんな男が中心にいるから、小説として面白い。しかし、これが私小説。現実だとしたら地獄だ。

女を見ると、やることしか頭にない発想は、高校生で卒業すべきだ。
30も40もなって、これでは人間として男として困る。
暴力や暴言は、相手を支配という欲求であり、彼は弱い相手にだけ、それを発動する。
本当は、大切にすべき恋人に対してまでも弱肉強食の論理を当てはめて上から目線で支配を強制する。
脳みその飛び散ったイメージで麻婆豆腐が重なり合い食べれないというのに無理に彼女に食べさせようとしたり。
最高の女で毎日やりまくっていた。その女に、自分の物。いつでも抱ける女だと確定すると勃たないとか・・・。キレると、俺は中卒だ。お前は大卒の癖にクズだと罵って。そんなの学歴コンプレックスじゃないかと思ってしまう。
人間の生々しい感情が瘴気のようにモワモワしていて、それがいいのだが・・・。
毒がいささか強すぎのような気もした。
結局、自意識が肥大している残念な人なのだが、そういう人が物語の中核にいると楽しいし、内省的に自己分析したりもするのも楽しい。
読んで損はない。そういう本なのである。

2020 4/17
令和2年61冊目
*****



人もいない春 (角川文庫)
西村 賢太
角川書店(角川グループパブリッシング)
2012-01-25





新宿歌舞伎町をベースに活躍する俳人の北大路さんの半自伝的エッセイ。



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キャラが強烈な人なのですが、半自伝的というわりに、その人生に深堀りした記述はなく。
それでも俳句という武器を片手に、言いたい放題しているわけで、それはそれで充分に楽しめます。武勇伝とかに近いジャンルですかね。俳句が随所に散りばめられていて、それが本書の魅力です。

著者は、新宿歌舞伎町を本拠にアウトロー俳人として活躍している人です。
見た目も言っていることも、私の父親世代ですが、1978年生まれなので、木村拓哉よりも、かなり若い。+-10年は同世代だと言われているから、私とも同世代です。

最初に、毛筆で自作の俳句をたくさん紹介してあって、これが迫力があった。
私は、俳句はよくわからんのですが、気になるものを紹介します。雰囲気だけでもアウトロー俳人を味わってください。

ウォシュレットの設定変へた奴殺す

5・7・5のルールなんで、ウォシュレットは便所と解釈するべきなのかな。
でも、この感覚は共感できるんだよね。俳句や、短歌は読み手の心の中で、どう響くかだから、これは、私にはいい作品。

エッセイの方ですが、俳句に絡めて文章を繰り出してくるパターン。
以下、気になったところを要約しました。

オッパブの話し・・・
足の指を舐めようとしたら、「おっぱい以外はダメだって・・・」

おっぱいを丸出しにして怒りたる


食べ物の趣味・・・

スタバに長居する若者は大嫌いだが、富士そばでさっと食事をすます中年は美しいと思う。
だいたい、珈琲もそばつゆも同じ色じゃないか?。

ずびずびと蕎麦をすすって花粉症


歯医者・・・

海月浮くやうに麻酔が効いて来る

歯科助手にかわいい子が多いと思うのはマスクをしている子が多いからだろう。


パチンコ・・・

台パンを一撃炎暑の街に出ず

台パンとは、パチンコの台にパンチすること。


恋人・・・

恋人というのはお互いの倫理観で縛りつけ合うつまらないルールだ。己に自信がないので「好き」を担保するためだけのお約束事を作るのだ。浮気なんかするに決まっているだろ。女遊びするために、頑張って働いているんだ。

凍らせてあるから恋が動かない


賛同できるものもあり、賛同できないものも多いのですが
北大路さんがアウトローと呼ばれているのには頷けます。
俳句と文章がよく合っていて心に響きます。

2020 4/15
令和2年60冊目
***


半自伝的エッセイ 廃人
北大路 翼
春陽堂書店
2019-11-16






心理学を使って「ビジネス」や「恋愛」で成功する方法を示している本でした。



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 タイトルは「ワルい心理学」だが、心理学をビジネスや恋愛で応用し、きちんとエビデンスも出しているので悪いではなく良い心理学だと思います。
 漫画があり、文字で解説しているパターンで、イメージとしては漫画と文字が半々。内容は実践的でわかりやすかったです。

 ビジネスへの応用。

相手に好意を持って貰う方法として、会話の中に相手の名前を入れる(呼びかける)。
これは5分に1回程度が良くて頻度が高いと逆効果らしい。

親身なあいづちをうつ。
相手の話しを聞くということです。
相手との共通点を探る。
共通点が多いほど関係性も安定してくる。(ハイダーのバランス理論)。

口癖で相手の性格を読む。
例えば、D言葉(でも・・・、だけど・・・、だって・・・、どうせ・・・)を連発する人は自分に自信のないマイナス思考の人。
こういう相手を不快にさせる言葉は要注意。嫌われる。

ゴマすりの効用
迎合行動・・・特定他者の行為を得るための言動。
賛辞、同調、親切、卑下
人間関係を円滑にする

嫌いな人間との対処方法

「頼み事」をする。
頼み事を聞き入れた人は、相手に対する感情の修正をしてくる。
本当は、その人のことを嫌いじゃない・・・と。

人を助けると、助けた人を好きになる。
その心理を利用する。

会議、目的に合わせて座る場所を選択する。

交渉について。
どのように相手を説得するのか?。
場の空気を読む。観察、注意力。

2つの説得術
・クライマックス法・・・先に説明、最後に結論。
・アンチ・クライマックス法・・・先に結論、後に説明。・・・場の雰囲気が話しを聞く状態でない場合に使う。

根回しの大切さ。
次の会議で、このような提案をさせていただきます。よろしくお願いします・・・。
影響力のある人にすべし。


恋愛への応用。


第一印象が大切(初頭効果)
話の内容より、表情などの外見が大切。(メラビアンの法則)
最初の印象と後の印象が違っていた場合。後の印象の方が残りやすい。(新辺効果)

外見に自信がなくても、もてたければマメになれ

マメとは、小さな心使いができること。

自分から相手に好意があることを伝える。
嫌でなければ相手も好意を示してくる。(好意の返報性)

会う回数が増すほど親密になる(熟知性の原理)

相手を高く評価する(承認欲求の充足)

マメはタイミングと距離が大切。

デートは夕方以降にする。
闇は心を不安定にさせる。

近くにいるもの同士が親しくなる(近接の要因)
近くの席に座る。

「小さなお願い」をしてみる。
断りにくいもの。何度も続けていくと相手は断りにくくなる。

対女性の場合、ひたすら話しを聞いてあげる。
アドバイスは必要ない。
女性は話しをすることでストレスを解消する行くものなのである。


少し女性を馬鹿にしているようにも思えるのだが、エビデンスが示されているので正解なのであろう。
キーワードは「願い事」のようだ。
嫌いな相手にも、好きな相手にも簡単な願い事をして
互いの関係を深めていくのがいいみたいだ。




2020 4/14
令和2年59冊目
****




まんがでわかるワルい心理学
松枝尚嗣
日本文芸社
2019-12-28


脳は死ぬまで成長し続けるそうである。具体的な方法が示されてある。


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脳を強化するための具体的な方法をわかりやすく説明している本です。
脳は死ぬまで成長し続けるそうです。

<思考系>  
毎朝、20文字以内で目標を示す。
寝るとき、今日の出来事を3つ箇条書きで示す。
10分間の昼寝。
自分では絶対に行かない場所に行き、やらない行動をとる。
じゃんけんで、わざと負ける。

<感情系>
ほめノート・・・気分をポジティブに。
植物に話しかける
感情を揺さぶる体験をする

<伝達系>
創作料理を作る

<理解系>
帰宅した直後に俳句を作る

<記憶系>
1日20分の暗記タイム

<運動系>
歌いながら料理する
散歩

<聴覚系>
ラジオを聴きながら寝る

<視覚系>
自分の顔をデッサンする


新しいことへの挑戦が、脳の強化に繋がる。

2020 4/12
令和2年58冊目
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