武藤吐夢@ BLOG

令和になって読んだ本の書評を書いています。 毎月、おすすめ本もピックアップしています。

カテゴリ: 住野よる

二番煎じ感をどうしても感じてしまう。怖い先輩の結婚退職は少し感動。


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麦本三歩の好きなもの の 続編
正直に言うとあきた。二番煎じ感がした。

確かに、双子の弟が登場したり、恋人になるぽい人が出てきたり、怖い先輩が結婚退職したり、ここ感動ポイントありです。
イベントは多く、それなりに盛り上がる。

でも、この小説は、この麦本三歩という天然の女性の魅力だし
それは本二冊まで保ち続けるほどの破壊力があるかないかで言うとなかったということだと思う。


三歩の魅力の一つは共感力だ。
デートの終盤にこんなことを妄想する。

これでいいのかな。三歩は酔いがすっと醒めていくのを感じていた。自分の今日の行動を振り返る・・・私は今日わたわたして自分の好きなことばかり話してへらへらして、一日つまんなかったなとお兄さんに思わせたのではないか。急に不安になってきた。・・・彼に今日一日・・・を無駄にさせてしまったのではということだった。

相手のことを思いやれる優しい女性です。

ただ、僕なら、この挙動不審な態度の数々に、きっと嫌になると思います。
彼女は恋愛に向いてない。

本書のモチーフはたぶん、これです。


嫌いなものより、好きなもののことを語ろう。そのほうが人生は楽しい


最後に、三歩の言葉の中で一番好きなのを紹介します。

明日は今日よりもちょっと頑張れたらいい。もしできなかったら明後日でいいや。




2023 8 16
+++
読破NO111






サブレのキャラが好きになれない。旅行の目的がおかしい。


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神経質な女の子サブレ。
彼女を愛する めいめい。
二人は、ひょんなことから彼女の祖父の家までの小旅行をする
夏の特別な四日間を過ごす。

夜行バスのシーンや、そこにいない友達をラインで繋いで関係性を深く描いた
まさしくアオハルの清々しいドキドキさせる前半から中盤に対して
後半、一気に物語は不穏な気配を醸し出し破綻していきます

そもそも旅の目的がおかしい

親戚のおじさんが自殺した。その理由を遺族に聞きに行くというのだ。
これ、倫理的に異常だ。

生きてることや、死ぬこととはっきり向き合った、命のエネルギーみたいなものを感じたい

そのために他人を傷つけてもいいのかい?


サブレの言った言葉でひっかかったのがあるので紹介します

自由だっていうのも、なかなか取り扱いが難しいな・・・
空を飛ぶための羽が生えてきたら嬉しいけど日常生活では邪魔だ、みたいなことかな。

サブレという女の子の複雑さがここに現れています。

僕が、この話しが好きじゃない。
まったく感情移入できない。
サブレも めいめい も嫌いで吐き気がするのは、好奇心で死んだおじさんの家族に、夏休みの課題だと嘘をつきインタビューするからです。
当然、娘にキレられます。
誰だって怒りますよ。ぶざけんなですよ。
無神経、死者に対するリスペクトが足りない。

歓待してくれたお爺さんが帰る寸前に死にかける
その時、感じた本音をめいめい はサブレに告白する

じいちゃんが危ないかもって時、俺は、わくわくした


この冷めた自分勝手な態度
鬼畜かよと思いましたよ
死はゲームじゃねぇ!!

生きるも死ぬもリアリティがない世代ということなのですかね
まるでゲーム感覚
だから、生の感情を体験したいと思った

でも、そこに見えるのは
未成熟というなの傲慢さです
ゾッとするような怖さでした。

自分に良くしてくれた人
好きな人の祖父
なのに、死にかけてた時、わくわくしたという彼
彼女は、最後のラストで、そんな薄情な彼に告白されて付き合うのです

ありえへん!!


何が何でもラブストーリーにするつもりなんだ
ふざけんなと思いました。




2023 4 9
+++
読破no55


恋とそれとあと全部 (文春e-book)
住野 よる
文藝春秋
2023-02-24

住野よるさんの幸せ探し小説。あったかい雰囲気がとても良い。



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住野さんの作品の中では一番好きかもしれません。
他人とうまくやれない不器用な少女と三人の幻影というのかな女性たちとは緩い交流を描いた物語。
雰囲気はファンタジー小説風。
モチーフは幸せ探し。
主人公の少女の口癖

人生とは・・・・みたいだ。
この比喩が好きです。

まるで何かの応援歌みたいでした。

桐生君、人生は虫歯と一緒よ
嫌なら早めにやっつけなきゃ

人生とは給食みたいなものだもの
好きなものがない時でも、それなりに楽しまなきゃ

人生とは冷蔵庫みたいなもの
嫌いなピーマンのことは忘れても、大好きなケーキのことは絶対に忘れないの

人生は昼休みみたいなものよ。時間が決まっているの、その時間の中で素敵なものに触れなきゃ。

人生とは自分で書いた物語だ。推敲と添削、自分次第で、パッピーエンドに書き換えられる

人生ってリレーの第一走者みたいなもの。自分が動き出さなきゃ何もはじまらない。

人生って夏休みみたいなものよ。なーんでもできるわ。素敵な過ごし方を探さなきゃ。


他にもいい言葉がたくさんありました。


アバズレさんの幸せについての考え方が好きだ。

幸せとは、誰かのことを真剣に考えられることだ

絶望的な悲しみの中にいても人は生きるのです
この言葉もいい


人は、悲しい思い出をなくすことは出来ないの。でも、それよりたくさんのいい思い出を作って、楽しく生きることは出来る

そして、最後に、一番好きな言葉


幸せは、あっちからやってくるものではなく、こっちから、選んで手にするものだから

この小説を読むととてもいい気分になれます。



2023 5 7
++++
読破NO54


また、同じ夢を見ていた (双葉文庫)
住野 よる
双葉社
2018-07-12



麦本三歩は嫌いなものの話しではなく、好きなものの話しをしたいと思っている。究極のポジティブ小説。


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たいしたことは起こらない。
麦本三歩は図書館に勤める女の子だ。
毎日、好きなものだけを見て生きている。

この本は、麦本三歩の好きなものだけで構成されている。
嫌いなものの話しではなく、好きなものの話しをしたいと思っている。
麦本三歩は幸せだ。
この小説を読んでいると、何となく幸せな気分になれる。

この小説は、幸せの形の1つを描き出しているのかもしれない。

彼女は少し不器用だ。
彼女の言葉に面白いのがあった。

「20文字以内で説明できる本はいい本だ」
確かに、その通りです。

茶髪の利用者さんに、ある本を探していると言われる。
だが、なかった。
その彼女を慰めようと頭をしぼって、やっと紡ぎ出した言葉がこれだ。
「いい匂いをしてますね」
さらに麦本三歩は続ける。
「図書館みたいにいい匂いです・・・」

そう、彼女は自由だ。独特の自意識の中で生きている。

好きなものに対する執着はすごい。
例えばラーメン。

リングに上がるボクサーみたいな気分でラーメンを食べる。
どんな気分なんだろう。
彼女にとって好物との対峙は常に真剣勝負なのだ。

心の中の妄想タイムが面白い。
天然で優しいおっとりした感じの麦本三歩だが、けっこう毒舌だ。
少し紹介する。

クレームを入れてきた態度のでかい先生に対して・・・

その長い髪の毛に百科事典を結びつけて海に鎮めることが出来たらと思う。

もうひとつ

てめえのアキレス腱をえぐりとって口にねじり込んでやる

毒舌モードの妄想が笑える。

恋愛観も共感できる。
先輩の絵本読み聞かせ会に参加した。小さい男の子と女子が彼女の膝に乗って話しを聞いている。
その女子が立ち去る。男子はその女子が好きだった。
心の中で麦本三歩は毒づく

「目当ての女の子にだけ優しい男はモテないんだぜ! 」

彼女のやっていることは、一見無意味のように思える。
しかし、そんな無意味なことと、意味のあることが混じって何か意味のあることになっているように思えた。


無意味な日々も、意味ある瞬間もどっちも大切で、それが一番いいということなんだ。


この小説の中で1つだけ、他とは違う感じのパートがある。
ズル休みをするパートだ。

それを先輩の一人に目撃されてしまう。
その先輩に相談する。

自分に自分で引いてて、それをどうにかしたくて・・・

あくまで、彼女の問題は自分の問題だ。
他者に対する悪いという気持ちじゃなくて、自分の問題なんだ。

そんな彼女に先輩は、あなたのことは最初から嫌いだったという。

ズルいことや、嘘はみんなすることだ。
そんな風にしてみんな生きている。
それを自覚しているのか、していないのかが問題だというのだ。
自覚していない=天然=三歩

だから、先輩は嫌いだと言った。

人から言われて、実感する。分かっていることと、実感することは、似ているようで違う。

と三歩はこころの中でつぶやく。

「でも、私に言わせたらさ、三歩は天然じゃなかったとしても、もっとずるいことをいつもやってると思うんだよ」

「今まで生きてきて、三歩だから許されてきたことって、あるでしょ?」


三歩だからしょうがない。
ミスをしても、何をしても三歩は先輩たちに許されてきた。
もちろん、無自覚なのだ。三歩としては。
それが許せないと先輩は言う。

三歩は自意識過剰で他人があまり見えない、見ない。
自分の好きだけで生きている。
嫌いなものには毒舌を浴びせかけ・・・心の中で・・・
世界の外に弾き出す

彼女は特別な存在として周囲に認識されていた。
三歩だから・・・
ここが先輩の許せないところ
背景にあるのは嫉妬心だろう。

三歩のような自由人は常に、この他者の嫉妬と戦わなきゃならない。
これが幸せの代償なのだ。

印象に残った言葉を・・・

怖い。一瞬でもそう思ったことを自覚してしまえば、感情は一気に大きくなり我が物顔で体内に居座る。


折返し地点なんてきっとない。
今日も前に進んでいなくちゃ、今日これから起こる楽しいことを味わえない。






2022 6 2
* * * * *
読破NO84





「君の膵臓を食べたい」。この言葉の意味が、この本を読むと変化する。究極の愛の言葉だった。
ネタバレあり


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「君の膵臓を食べたい」と恋人に、いきなり告白されたら、たぶん、びびると思う。
 たいていは、相手の正気を疑うでしょうね。
 カニバリズム(人肉食)とかと関連付けする人もいるかもしれない。

 でも、この本は、そういうホラー的なのではなく、純粋な恋愛小説なのです。
 ラスト号泣しました。
 まじです。

 
この本の登場人物のキャラが良い
 恋愛ものだから、男と女が出てくるのたが・・・
 高校生が主人公です
 春樹は、人が嫌いな引きこもり系の男子生徒
 本ばかり読んでいるオタク
 彼が、病院の待合室で文庫本を見つける
 共病文庫というタイトル
 中を開くと、日記だった
 自分は肝臓の病気で、余命いくばくもないと書いてある
 文庫は、遺書だった。
 所有者は、クラスメートの綺麗で陽気な女子の桜良

 秘密を共有することで、二人は親密になっていく
 春樹の方も桜良の誘いは断れない
 どちらかというと、病気の桜良が、ぐいぐいいくタイプかな
 いきなり、博多の一泊旅行とか積極的すぎるよね

 春樹は、自分のことを桜良が、どう思っているのか
 それが気になってくる
「・・・どう思っているの?」と聞く
桜良の返答が面白い
教えてたら人間関係、面白くないでしょう。人間は、相手が自分にとって何者かわからないから、友情も恋愛もおもしろいんだよ

 だよね、全部わかっていると、ほんとおもしろくないものね。

 さて、生きるとは何なのか?
 桜良の台詞がおもしろい。
「きっと誰かと心を通わせること。そのものを指して、生きるって呼ぶんだよ」
命の湧きたつ音がした。
・・・ああ、そうか。
僕は気づいて鳥肌がたった

この小説で、一番好きなところ。
人嫌いで、人間をわざと遠ざけている春樹の気づきがよくわかる。
生きることの意味は、誰かと心を通わせることだと。
 いつしか、春樹は自分が桜良をどう思っているのかに気づく
僕の心は、彼女で埋め尽くされた。
僕は、君に・・・・・。
「僕は、本当は君になりたかった」
僕は、どうすれば君になれるだろうか?
僕は、どうかすれば君になれるだろうか?
どうすれば
・・・彼女に贈るのに、これ以上、ぴったりの言葉はない
僕は、渾身のことばを彼女の携帯電話に向かって送信した。
僕は・・・
「君の膵臓をたべたい」


「君の膵臓をたべたい」
これは、彼の究極の愛の告白だった。

 だが、彼女の返答を聞く前に
 運命は、理不尽に、その道を閉ざしてしまう

 彼女は、殺される
 彼の前からいなくなる

 手元に残ったのは、彼女の書いた遺書である
 共病日記だけだった

 後半の展開には、驚いた
 病気でなく、通り魔に殺されるという展開にだ

 とにかく、言葉が津波のように襲って来て
 桜良と春樹の感情が
 愛が
 渦を巻いて
 その中に、気がつくと巻き込まれていた

 おもしろかった

 ☆☆☆☆☆ の おすすめ本です。
 令和   2冊目  2019 5/4
 
【ライトノベル】君の膵臓をたべたい (全1冊)
【ライトノベル】君の膵臓をたべたい (全1冊)

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