作者の色んな思いが伝わってくるような骨太な作品でした
明治の軍人である、二人の男が 神として祀ってある神社があった
そこでは、結婚式をしている
高堂と木門
高堂の神社の派遣スタッフの浜野という
ちょっと屁理屈ばかり言う、偏屈な若者が主人公
彼は、高堂という歴史上の人物のことなんか少しも興味がない
時給がいいのでバイトしている若者
何しろスタッフの面々は・・・、仕事に誇りを持っているわけでもなければ、・・・新郎新婦の幸せを祈っているのでもない・・・その日暮らしの非正規労働者なのだから・・・そのスタッフの中に、やけに敬意を払われている制服の色の違う連中がいた
彼らは、明らかに無能だった
それが、木門 という神社から派遣されてきたスタッフで
両神社は、二人の軍神のように提携を結んでいた
高堂の一番いいところは、一に結果、二に結果・・・そして、ついに、不満分子が木門排斥運動を始める
木門がいるエリアでは、それが適応されない
このようにして伝統は崩れ去るのだった。
連中がクズクズしているところに出くわしたら言ってやるだけだ、
クズクズしてんじゃねぇぞ、ボケが!
倉知という木門の新人の加入によって、彼らは変化していく
旧体制の変革
そして、浜野もどんどん仕事に没頭していき、やりがいを感じたり
軍神の高堂にも尊敬の気持ちを持つようになるのだが
高堂の神主は、神道の基本から逸脱しているとわかる
つまり、組織の継続、存続を一番に考え
金儲けに走っている
倉知たち木門のスタッフは、浜野たち派遣スタッフを追い出しにかかる
式場内で、木門のスタッフの存在を確かなものにして
高堂の神主に影響力を持とうという作戦
つまり、神道の精神(右翼的な考え)と金銭第一の考えの衝突
親族たちは、何故、主賓にビールを注ぎ続けるのか。・・・新婦は黙り、新郎の父のみが謝辞を述べるのか・・・2つの家が1つになることを祝う宴なのであり、また、男が女を家こど飲み込む現場なのだ。
とにかく新婦を大事にしなさい・・・、そうすれば、多少ミスをしても・・・大丈夫
伝統主義による女性差別と商業主義による男性差別。この二つをかけ合わせて粉飾した現代の婚礼・・・
このような、二つの対立があり、浜野は商業主義側である
だが、 木門のスタッフの努力で、浜野たちは追い込まれていた
高堂の神主は、同成婚も受け入れると宣言
そんな時、お一人様婚をしたいと女性が一人でやってくる
木門のスタッフは反対するので、浜野が動いて大ホールで受けてしまう
これは伝統主義に対する戦いだった
ラストが、怖い
この高堂伊太郎という人物は、本当は軍神になんかなりたくないと言っていたと、このお一人様婚をした女性から、浜野は教えられる。
木門が、軍神になったついでに、高堂も軍神になったというのだ
高堂さんは、・・・意思が強かったはず・・・、生前に拒んだものは、死後も拒み続けたのではないか・・・高堂神社には神はいない・・・
神のいない神社でやる結婚式
商売としてやる結婚式
自分たちの考えを押し付ける為の戦い
すべて不毛である
神とは何なのか?
神社で結婚するとは、どういうことなのか?
神社とは、そもそも何なのか?
色んなことを喉元に突き付けられる作品だった
何かを否定したりしているのではない
ただ、問いかけているのだと思う・・・
☆☆☆☆☆ の おすすめ本です。
2019 5/11
令和 6冊目
神前酔狂宴 [ 古谷田 奈月 ]