手紙というものは、人間の心を映す鏡と似ているのかもしれない。

少しネタバレあり


vV2EXRxJNGEu0NZ1557630907_1557630937


 ツバキ文具店という本を読み終わった時、知り合いから手紙の話しなら、辻さんが傑作を書いているよと教えてくれたのが、この作品だった。
 確かに、この作品は凄い。
 売れない小説家が、アルバイトとして始めた代書稼業
 これは手紙を代わりに書くという仕事です
 10のエピソードが紹介されていて、かなりバリエーションに富んだラインナップになっております。
 前書きに、こんな言葉があった。

手紙というものは、人間の心を映す鏡のような存在である。

 なるほど・・・と思った。

 印象に残った手紙の言葉がある。
 優柔不断の依頼人の女性は、元彼に時々呼び出され、その度に肉体関係に持ち込まれ、金まで要求される。彼には恋人がおり、彼女のことを捨てたのである。
 依頼は、別れの告知の手紙の代筆

 これが痺れるんだよね。

 ありがとう。嫌いです。

 手紙の代筆をして貰ったことで、依頼人は自分が、どんな人間だったかが見えてきます。
 自分を客観的に見ることができるようになりました。

 この「嫌いです。」は、元彼に対してなのか
 それとも、優柔不断な自分に対する言葉なのか

 手紙というと、やはり、ラブレターです。

 恋に悩む人間にとって、ラブレターほど心強い飛び道具はない。
・・・手紙には魔法の力が潜んでいて、・・・思いは数倍に美化されて相手に届く。
 人間は、誰しもその内側に素晴らしい何かを持っている。その何かを上手に文章化できるのであれば、・・・苦しい思いを代弁するもっとも頼もしい援軍となる。
・・・手紙には魔法の力が潜んでいて、・・・思いは数倍に美化されて相手に届く。
 人間は、誰しもその内側に素晴らしい何かを持っている。その何かを上手に文章化できるのであれば、・・・苦しい思いを代弁するもっとも頼もしい援軍となる。

 人間は、心の中にいくつも鍵穴を持っていて、すべての鍵を開けることができる殺し文句など存在しない。合鍵はないのである。
 人間一人一人に対して、一つ一つの鍵が必要になる。(これが恋の鉄則)
 名言が多い・・・。


 内容に対しては、具体的には触れない方がいいのだが、
 ある殺人犯の独白のような手紙と、死にかけの祖母へ死んだ孫からの手紙は
 かなり精度が高い感動的な作品となっていて
 とくに、孫からの手紙のラスト、死にかけの祖母の残した手紙がいい
 死んだ孫が会いに来たという内容なんだけど
 すごく感動的なんですよ

 最後に、辻さんのあとがきから、手紙についての記述があるので引用します

世界にたった一つしかない自分だけに向けられたメッセージ
それをポストの中で発見した時、人は同時に、ささやかだが何物にも替えられない喜びを受け取ることになる

 これ読んでて、手紙を書きたくなりました・・・



☆☆☆☆☆ の おすすめ本です。

2019 5/12