全国の本屋さんの本音が読めます。私には、面白かったのですが・・・


61s7a-JFt+L._SL500_


最初に言っておくのですが、私にはとても面白かったのですが、万人受けはしない本だと思います
業界の人向けに書かれているようにしか思えませんでした
全国の本屋さんにインタビューしたまとめ本です

私は月に数回、本屋に立ち寄ります
それは都会の大規模書店も含みますが、個人経営してるような本屋にも出没します
最低1日に3店はまわります

楽しみにしているのは棚です。人によってはコーナーとも呼びます
その店の一押しの棚
そこを見れば書店の主が何を売ろうとしているのかがわかります
店の実力が見えてきます
後、POPも丁寧に目を通します

棚は常に変化していて、1か月に一度の来店では見逃してしまいます
だから数回行きます
棚がいつも同じ本屋には行きません
売る気のない店で買い物はしたくないからです

この本に戻りますね
本をあまり読んだことのないという書店員がおもしろい棚を作っている

「情熱ある本の棚は常に流れている」と著者は言います
まさしく、川の流れのように流れ変化し続けているのです
「棚は昨日と違うし明日もまた違う姿をしている」
この棚見てみたくなりました。

この書店員は、最近まで村上春樹もよく知らなかったそうです

結局は、客に何を届けたいのかという情熱なのだと思います。
それがあるから棚が流れている。変化し続けている。客は毎日でも顔を出したくなる
それが魅力的な店だと思います
ただ本があるという本屋には魅力を感じません

本の知識がある人が良い棚を作るのだという私の偏見は、このエピソードを読んで180度くらい考えが変わってしまいました
ようは情熱と努力ですよ

白いワルツと犬 という本を有名にした伝説の書店員の木下さんの話しもおもしろかった
何のために、POPを書くのかという問いに

「あなたから行動しなければ死んでしまうであろう本のためにそうするのです」と答えます

つまり、埋もれて死のうとしている名作を顧客の元に届けるためにPOPを書いているのだというのです
売上向上とかの打算からでないところがかっこいいです

書店員が顧客の質問に答えて「おすすめ本」を提案する店に行きます
有名書店主のいる店ではありえるような光景ですが・・・
もちろん、最初は実際に読んで感動したものをすすめていたが
苦手な分野や読めてない作者もいるが、顧客の傾向や趣味に合わせて
ネットなどで調べて、これは良いだろうというものを推薦しているという内実を暴露しています
こんな真実はちょっと知りたくなかった

著者は、「おすすめ本」を教えて本を売るやり方を主観の押し付けだと厳しく非難しています
たしかに、人によって感じるところは違うのですが、少し厳しすぎるようにも思いました

先ほどのPOPなのですが、こんなことも言っています
「POPは自分で自分の客に本を渡すライン」
これはいい言葉です。主観であっても、それを伝えるのは正しいということです。
ネットで他人の感想を読んで…はどうだかと思うけど・・・

もう1つ面白い言葉がありました
大手の書店の人の言葉

「客は自分の好みの本が置いてある書店を良い店と思う。その本は持っているから買わないが、そういう店には他にも何かあると期待して何度も通う」
これはあるあるですね。


この本全体から感じるのは沖縄の書店を訪れた時の著者の感想だ

「すでに午後だがまだ一冊も売れていないという。僕が来てからも立ち止まる人こそいるが買う人がいない。小さな店で店主と話していると同じ場面に遭遇することが多い」

全国で書店が苦戦している
この本の大半は書店主の泣き言だ
経営が苦しい。閉店の危機。本を買ってくれーーー
著者が訪ねるような有名店でも閉店の危機を迎えている
この本を読んでいると、それが切実な問題なのだということが伝わってきます

本関係の業界の内輪の話しが多いように思えますが
外部の人間にも発信したメッセージもある
とても中身のある本だったと思います
続編に期待・・・


2019  7/3
令和 31 冊目
☆☆☆☆☆ の おもしろい作品でした。



本屋な日々 青春篇 [ 石橋毅史 ]
本屋な日々 青春篇 [ 石橋毅史 ]