武藤吐夢@ BLOG

令和になって読んだ本の書評を書いています。 毎月、おすすめ本もピックアップしています。

カテゴリ: 櫛木理宇

市松人形の話し、ゾッとした。あのラストは怖い。


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ホーンテッド・キャンパスのシリーズ9作目が本書である。
短編集です。作品数は4つ。
このシリーズは短編が良い。

事故物件に住むという話しは、ある芸人さんがやってから小説や映画のネタにもされるようになったのだが、今回の場合は、その理由が切なかった。

「──彼女にもう一度会いたくてね。いまも探してるんです」 はにかんだように鈴木は言った。
彼女とは幽霊のことだ。
これは新入部員のエピソードなのだが、なかなかに奥が深い。
おもしろかった。

今回、一番のできは市松人形の話しだ。
これはかなり怖い。

「だって、その人形は──夕海子ちゃんが死んだとき、いっしょにお棺に入れて燃やしたはずなんらわ。だすけ、ここにあるはずない。なのになんで……」 老女は一同を濡れた目で見まわした。 「なんでいま、この子がわたしの家にいるの?」 その問いに応えられる者はいなかった。

「いまの若い人は知らないでしょうけどね。市松さんというのは抱っこして遊べるだけじゃなく、お守りだとか、災いの身代わりになってくれる形代でもあるんさ。お雛さまと同じように、持ち主の難や業を身代わりに受けてくれるものなんさね。そういう願いをこめて、買ってあげたんよ」
完全に呪いの人形
供養しても戻ってくる
その人形が身代わりになって引き受けていものは・・・

ラストが怖い。
これだと解決していないのかもと思ってしまう。


2022 2 27
* * * * *
読破NO 31



災害で陸の孤島みたいな場所に閉じ込められた、そこは霊場だったみたいな・・・。




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シリーズ8作目
そろそろ飽きてきました。
今回は短編でなく長編
はっきり言って、微妙・・・。

陸の孤島のような秘境に災害でカンヅメになったメンバー
そこは霊場だった。
たくさん出てくる幽霊は怖いし不気味だが
生贄の儀式も神話もどこかで聞いたような話しで
解決も劇的ではなく盛り上がりにも欠けた。

「瓜子神社? ということは、瓜子姫伝説になにか関係があるのかな」

しかしこのとおり山奥の貧しい村ですからな。雪崩や土砂崩れ、鉄砲水などの天災にみまわれれば、かんたんに壊滅の危機に瀕します。〝何年かに一度〟の福くらいでは、われわれの祖先は僭越ながら飽きたりなくなった」 鶴橋は二枚目の額を指して、 「そこで村は御役目を立て、神の子孫をさずかろうとしたのです」

話しのベースは神話だ。

「ハイヌウェレ型神話は、インドネシアのセラム島に伝わる伝承だ。ココヤシの花から生まれた少女ハイヌウェレは、尻からさまざまな宝物を生むことができたという。村人たちはそんな彼女を気味わるがり、殺してしまった。ハイヌウェレの父親は、掘り出した死体を切り刻んであちこちに埋めた。すると、彼女の死体からは芋が生えてきて、人々の飢えを満たしたそうだ」

「これは日本神話の大宜都比売にも通ずるパターンだ。大宜都比売は鼻や口、尻から食べ物を生む豊穣の女神だった。しかし『古事記』では素戔嗚尊、『日本書紀』では月読尊の怒りをかい、ハイヌウェレと同じく斬り殺されてしまう」

「血と肉を大地に捧げることで、豊穣を得る。──つまり、生贄だよ」


おもしろいことに気づいた。
神話って、日本の話しと外国の話しで共通しているところが多い
日本の話しの中でも、色々と共通するところがあり

ここで出てくる瓜子姫の話しはいろんな話しと共通しているが
例えば「桃太郎」の話しよりもこっちが古いとか
神話の世界は興味深いなと思いました。





2022 2 26
* * *
読破 NO 30


ホーンテッド・キャンパス この子のななつのお祝いに (角川ホラー文庫)
櫛木 理宇
KADOKAWA
2015-10-24

老人ストーカーの描写が汚!!。しかし、犯人が・・・・。何か残念・・・。


ダウンロード (68)


ストーカーの話しです。
相手は老人。
だから、みんな、まともに取り合ってくれない。

孤独な老人の問題は社会問題になりつつある
現代の病です。
僕たちの世代とは違う価値観で生きてきた彼らの辞書には
セクハラとか、ストーカーとか
そういう言葉が存在しないかのようです。
だから、簡単に法律のハードルを超えてくる。
怖いものなんて、孤独な老人にはない。

老人施設に勤務している人なんかがよく、老人に抱きつかれる、触られる。
下品なダジャレを言われる。彼氏がいるとか聞いてくる。太っていると「デブ」と言われた。
そういうセクハラ、パワハラめいたことをよく聞きます。
お年寄りだから・・・許してあげないと・・・
みんな泣き寝入りです。

それって駄目だと思います。

本書に出てくる老人はきもい
作者の描写力なのでしょうが、リアルです。
こんなことされたら気が狂います。
老人のやることだからと、警察は相手にしてくれないし
友達や兄弟にまで、まるで自分が悪いかのように責任転嫁というのか
被害者なのに責められる。

実際、80の老人に、こんなエグいストーカー行為ができるのかはわかりませんが
とにかくインパクト大

しかし、それが20年前の連続殺人事件と関係してきたり
ストーカー被害者同士の根が繋がっていたり
さらに、犯人の正体

ここまで来ると、もう、ストーカー無関係というのか
殺人する奴が、どうしてドアにウンコ塗りつけるのか
精神的に追い詰めるということなら、正体がバレるようなことはしないと思うんだけど・・・

ちょっと残念というか・・・
老人ストーカーいらないだろと思いました。
でも、それなくしたら物足りないし
何かイライラする小説です
とくに、犯人
それは逆恨みだと思う。

刑事同士の会話で1つおもしろいのが・・・

たとえば、赤い色を見て、人は何を真っ先に連想すると思う?

りんご、トマト、日の丸・・・

竹根は、「おれを笑ったやつの口の色」と答えた。
白は「おれを邪魔にしたやつの目の色」


この世の中には、めっちゃヤバい奴らがいて
どうしてもわかりあえない
そういうことなのだと思うが、性悪説なのかな。
凶悪犯は、そういう異常者という
この小説内の取り扱いに、僕は違和感を感じました。
そうかもしれんけど、何か違う気がするんですよ。


2021 11 14
130冊目の読書 
* * * *


老い蜂
櫛木 理宇
東京創元社
2021-09-21

犯罪者とは、鏡に映った歪んだ顔にほかならない。


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元捜査一課の刑事の爺さんと、イラストを趣味で書いている大学生の孫と友人が
30年前の連続幼女殺人事件を追うという展開である

この犯人は異常者である
遺骸の描写は生々しい

胃は、ほぼからっぽだった。前歯が6本叩き折られ、頬骨と鼻骨と眼窩下孔を骨折していた。脾臓に損傷があった。明らかに過度の殴打によるものだった。また膣と肛門に著しい裂傷を負っており、両の股関節がはずされていた。
死因は窒息である・・・、咽頭の奥に土砂が詰まって・・・
つまり、里佳ちゃんは穴にほおりこまれた時は生きており・・・生き埋めにされ、じわじわと・・・

被害者の幼女は8歳である

当然、犯人は逮捕されている。一人は死亡。もう一人は死刑になるのを待っている
しかし、この受刑者は何か変だ

被害者家族の元に当時電話が頻繁にあった。
その中に、被害者の女の子がいつも歌っていた歌を口ずさんでいたものがあった

ABBAの「ダンシング・クイーン」のB面
TIGERって曲だ

おまえたちが見ているのは、おれの形をした影
おれは虎

真犯人は、自分のことをと名乗っている

いくつかの謎がある
どうして主犯格の男は自白して、その後、精神を病んだのか?
,当時の証拠が消えたのは、どうしてか?

元捜査一課の刑事は、孫とその友人に協力を頼み
Twitterや動画を駆使し、忘れ去られた事件をもう一度表舞台に押し出すのだった

このネットを使った犯人との駆け引き、捜査、アピールの仕方などなど・・・
これまでのミステリーとは違う捜査方法が、この作品の特徴でありストロングポイントでした

ネットの作中の使い方が上手い
視聴者数やらフォローの数の増やし方・・・

観てもらえない作品には意味がないんだ
ここに孫の考え方が詰まっている感じがした。

性犯罪とは何かを語っている部分がおもしろい

性犯罪・・・性欲よりむしろ支配欲のたまものである。獲物を支配下に置きたい。コントロールしたい、君臨したいという欲望が先にくる。・・・既婚者の性犯罪が驚くほど多いのは、そのせいだ。
他者を支配しコントロールできるという・・・歪んだ自負心・・・・
これは児童虐待の犯罪心理とも似ている
この犯罪者心理を利用し、犯人をネットで挑発する


犯人を孫の友人がこんな風に表現しているのがおもしろい。

アガサ・クリスティーの「ねじれた家」を思い出します
・・・殺人者に欠かせない条件とは、虚栄心、絶え間ない自己主張・・・自分がどんなに賢いか、警察が馬鹿か、周囲にアピールせずにはいられない

そのようにして、犯人は墓穴を掘り捕まるのです

隠ぺい体質の警察が、彼らの捜査を邪魔する場面を盗撮しネットにUPするところなんかは
相手が悪いからいいかとも思うのですが・・・
違う場面で、これを市民がしたら、警察はすごく捜査がやりにくいし
捜査状況とか、色々な犯人逮捕に繋がる情報が漏洩したりあるかもしれないと思いました
ネット時代の犯罪捜査は、ますます大変になりますが
Twitterなどで、よくボケたお婆さんを探しています。拡散してください
犬がいなくなりました。拡散してください。
ああいうのを見かけますが、あれっていいですね
探偵とかが、情報収集にネットを利用するケースもあると聞きます
これからは、ネット利用も含めた犯罪捜査というのも考慮しないといけないのかもしれません



2019  10/17
令和 91冊目






森司とこよみの距離が急接近、シリーズ第七作品は読み応えあり。




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シリーズ7作目
表紙のように森司とこよみの距離が急接近

三話目のラストに気になるシーンが・・・

例のきれいな子が、ひょろっと痩せた男子学生と相合傘で正門に向かって歩いていた・・・
女の子がさすと男の子にばかり傘が傾き、男がさすと今度は女の子にばかり傘が偏る。しまいに「もういいか」と言いたげに傘がたたまれ、しんしんと降りつづく雪の中を肩を並べて歩いていく・・・

 二人の程よい距離感が上手に表現されている場面。
 これが3話目のラストで・・・
 4話目では、森司に襲いかかってくる黒い虫の大軍というか女の霊に、こよみが一人で立ち向かうのですが、そこに繋がっていきます。
 作者が女性なので恋愛を描く方法も間接的で読者をじらせます。そこが、このシリーズの魅力の一つかもしれません。
 
収録作品  嗤うモナリザ・仄白い街灯の下で・薄暮・夜に這うもの 計4作品

嗤うモナリザが一番おもしろかった
ドリアン・グレイの肖像画のような話しでした
その絵を見た女の人たちが不快感を覚えた
それだけではすまず、モデルの婚約者の顔が絵のように引き攣った笑顔になっていく・・・

夜に這うものは、首つり自殺をの目撃者が、それに誘発されて首を吊りたくなるという話し
黒い虫が・・・
50年前に死んだ学生運動の活動家の女性の霊が関係していて
ラストシーンでは、女の霊に取りつかれた森司に黒い虫が大量に襲いかかり
その霊に、灘こよみが立ち向かうという話しでした

何故、そんな無謀なことをしたのと後で聞かれたこよみの返答が良い

「…同じ想いなら、陰と陽をぶつければ、陽が勝つと思ったのです」


これって、幽霊なんかよりも、私の方が先輩を愛しているのよってことですよね。

2019  8/16
令和 54冊目
☆☆☆☆ の かなり怖い作品だった。

オカルト研究会誕生の秘話は必読である。



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さすがにシリーズ6作目となるとマンネリになってくる
パターンも何となく似ているし・・・

今回も異分子の投入で人間関係を揺さぶる
森司の中学の時の親友の津坂だ
事件に頭を突っ込んできてかき回す存在だが、森司の自己評価の低い理由が判明してきた

収録作品は、旅籠に降る雨・白のマージナル・よくない家・異形の礎

「よくない家」はよくある心霊物件で普通に怖かった。
描写が秀逸なのもあるし、怖い話しが2つあるのも良い

「白のマージナル」は彼らが所属するオカルト研究会の誕生秘話である
少し切ない話しなので、このシリーズのファン必読です
特に、ラストの種明かしで少し切ない気分になる
ネタバレすると、この話しはよくないので・・・

「異形の礎」は都市伝説の幽霊タクシーのアレンジ作品だ。
憑依ものなのだが背景が複雑でミステリーのように読めて楽しい
邪悪な霊との対決は単純で拍子抜けだが
このシリーズはバトルはどうでもよく
怖さとミステリーのような謎解きが魅力なので、これで良い



2019  8/15
令和 52冊目

森司の高校時代の同級生の女子学生の登場でマンネリ気味の構成に少し変化が起こりました。




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本シリーズも5作目に突入です
新しい登場人物として森司の高校時代の友達の板垣果那が登場し
マンネリ化した雰囲気を少し変えてくれますが
本題である恐怖譚の方がパワーダウンしていました

収録作品   告げ口心臓 啼く女 まよい道まどい道 姥捨山奇譚

この中では 啼く女 が面白かった
自由奔放な女性の出現により1つのサークルが破滅の危機にという過去
その女性が心霊写真としてよみがえるという
何とも不可思議な話しなのですが・・・
ただのビッチと思っていた女性が少しずつ好感度を上げていくのが良いところです
でも、ビッチです

板垣果那とのエピソードがおもしかった
森司に高校時代、アルバム係だった板垣さんが質問した
明日、世界が滅亡することがわかりました。さて、最後の一日、あなたは何をして過ごしますか?
彼は答えなかった
理由は、そんな未来は想像するのも嫌だったからだ

大好きな灘こよみのいない世界なんて
一瞬たりとも想像したくない

このエピソードが、私は好きだ
その気持ちよくわかる


2019  8/12
令和 49冊目
☆☆☆ の おもしろい作品だった。

シリーズ4作目。今回のテーマは家なのかなぁ・・・。




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毎回、少しずつ話しがグレードUPして言っているように思います
今回は、夏合宿で2つの怪異と遭遇し、こよみと森司の距離がぐっと近くなりました

アイデンティティや家の問題がモチーフになっている作品が多かったように思います

黒魔術のいけにえ儀式を目撃したという最初の話しもそうだが・・・
田舎の嫁に嫁いだことで嫁いびりにあった女性たちの恨み節や
イベントサークルでの自然発火事件も
子供たちの霊を引き寄せる青年の話しも
すべて何かの条件とかに我慢をしいられていて
爆発した。
というような印象があります
それは家であったり、傲慢な彼氏であったり
人や習慣がその人自身の個性を殺し生き辛い思いをさせるのです

その代表選手が最後の「死者の花嫁」
民俗学の伝承からヒントを得た秀作です
ヒロインの灘こよみとそっくりな容姿だった大叔母の話しです
彼女は子供の頃から美人で、そのため近所の家の戦争で亡くなった長男の嫁に勝手にされてしまった
絵馬に名前と似顔絵を描かれただけなのだが
それが噂になり、せっかく嫁いだ家でも
変な幽霊騒ぎが生じて破談を繰り返し
5回も結婚を繰り返し若くして病死するというのですが
この幽霊の正体が、あの勝手に結婚というか、名前を使った家の次男で
彼女のことがずっと好きだったとか言うのです
これじゃ、どこに恨みをぶつけていいのかわかんなくなる
この死者の花嫁になったことで、彼女の人生はめちゃぐちゃです
幽霊に化けて変な噂さを流されて、こんなの人災です
好きだからってやっていいことと悪いことがあります
家に翻弄され、アイデンティティーを無視され
ひどい話しなんですが、自分とよく似た親せきの灘こよみの守護者になっていこうという
この幽霊の叔母さまは悪くありませんでした
まるでミステリー小説のようなオチが、どの作品にもたいていあり
色々な楽しみ方ができます




2019  8/8
令和 47 冊目
☆☆☆☆ の おもしろい作品だった。







シリーズ三作目、怖い作品もありゾッとした。





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怖くないホラー小説として話題の本シリーズですが・・・
この第三弾は、何作品が夏に読むのにふさわしい怖いゾッとするような作品がありました。
短編集、全部で五作品

最初の話しは、身体の奥底から冷えてくるような恐怖譚
自分に不都合な記憶が消えてしまうというのが怖い

「覗く眼」という話しは生霊の話し 
ラストのオチは良かった
ホラーミステリーの秀作

「水辺の恋人たち」という最後の作品は呪いの沼の話しで
これはもう短編映画のうようで・・・
ラストシーンはかなり怖い本格的なホラーだった
幽霊と沼での決闘になります
ヒロインの灘こよみが霊に憑依され
それを弱霊能力者の主人公が・・・

 一番好きな話しは「なきぼくろの人」という作品で、深夜の建物の警備のバイトをしていたら霊を見たという話しから、その後、恋人に対して暴言を無意識に吐いてしまうという変な状況になり、実は、それが祖母の霊の仕業だったという。
 この祖母は、孫である彼を守るためにそんなことをしていたのだった。
 実は、この幼馴染の恋人というのは彼の腹違いの妹だという話し。
 怖さの中にお婆さんの愛情が入り混じっていて良い話しだった。

全体として少し恐怖度が増しミステリー度が少なくなっている感じに思えた。
ヒロインの灘こよみの幼馴染が出てきて
恋のバトル的展開の予感がする・・・



2019  8/4
令和 45 冊目
☆☆☆☆ の 夏に読むのに相応しい作品だった。

ホーンテッド・キャンパス(桜の宵の満開の下) (角川ホラー文庫) [ 櫛木理宇 ]
ホーンテッド・キャンパス(桜の宵の満開の下) (角川ホラー文庫) [ 櫛木理宇 ]

日本ホラー大賞をとった「ホーンテッドキャンパス」シリーズの第二弾。夏はホラーを読まないといけません



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夏になるとホラーを読みます
怖い物を読まないと夏を実感できないからです
ちょうど良いのが、このシリーズ
最新作は14作品目というから長寿で人気のシリーズです
9月には15弾が発売予定ということなので
今年の夏は「ホーンテッドキャンパス」祭りですな

本作品は第二作品目です
短編集で5つの作品が収録されています
表紙はライトノベル風ですが、角川ホラー文庫です
活け人形、悪夢を見せる鏡、居酒屋幽霊、映画に移り込んだ霊、同級生の霊・・・
ラインナップは多彩です
特徴は、ホラーなのですが、そんなに怖くない
ミステリー的な要素が強いのです

大学のオカルト研究会のメンバーのところに依頼がやってくるという形をとります
キャラが出来上がっていて、それもこの作品の魅力になっています
メンバーのうち2人も霊感が強い人がいて
一人は霊が見えます
これが主人公の八神。彼が好きな女の子が灘こよみ
この二人の恋の行方も気になるところです

今回、気になったのは「人形花嫁」という話しです
活け人形というリアルな人形が
映画の「チャイルド・プレイ」みたいに動きます

依頼人の大学の先輩がこんなことを言います
「あの人形、・・・夫に恋しているようなんです。夫の恋人、いえ、妻になりたがっているんだと思います」

その人形の描写がこう・・・
白くなめらかな手の甲にはうっすらと青く静脈が透け、爪のかたちまでもがひとつひとつ精巧に再現されていた
腕をかえしたら指紋や掌紋まであるのではないかとおもえるほど
それは人間にひどく近い「女」だった

その人形が動き、指輪を握りしめて離さないなど
まるで妻であるかのように振る舞うのです

ラストのオチは少し気にいらないが
人が死なないホラーというのも良いものです

八神と灘こよみの恋の行方ですが・・・
今回、彼女の理想のタイプが判明します
「わたしは、その・・・火付け盗賊改方、長谷川平蔵さまが、理想の人です」
何てこった。
この一言で読者の男性の皆さんの夢が崩れていく
変な女の子だったのです
何やねん、それ・・・
時代劇か!

その不器用な彼女が
ラストで、バレンティンデーに彼の部屋にやってきて
チョコを・・・意味深なラストは次巻が気になるところ




2019  7/29
令和 42 冊目
☆☆☆☆ の おもしろい作品だった。

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