こんな夢を見た・・・




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大学生の時に読んだのですが、当時はこの作品をホラーだと思っていました
再読してみると、印象がかなり違った

昔から一番好きだったのは第一夜目の話しです
女が死ぬ話しです。彼女は100年後に復活すると言います。
死ぬ間際「百年待っていてください」「きっと逢いに来ますから」と言われます
何かぞっとしますよね
そのうち、墓から真っ白い百合が伸びてきます
その時、彼は自分が百年間、彼女を待っていたことに気づくという
ホラーなんかじゃなく純愛ストーリーでした

印象どおりだったのは第三夜、深夜に父親が不気味な息子を背負って歩いているという話し。
子供は盲目です。彼をどこかに捨ててしまおうと思っています。それで森に行く。
いきなり「お前が俺を殺したのはちょうど百年前だね」と言われます。彼はその場所で百年前に盲人を殺していたという話し。これはゾッとします。

第七夜目の行先きのわからない船旅行の話しも印象に残っています。
これは不安にかられます。それでホラーだと思ったのですが、今、読み返すと漱石や明治の末期の人たちの中にある「日本はこれからどうなるのか?」という漠然とした不安を表していたようなフロイトの夢分析のような作品だったのかもしれません。

 この本を読んだ友人の好きな話しは、第六夜の運慶が明治時代に現れて彫刻を彫っている話しだそうです。木の中に作品の形が隠れているというのですが、明治の木にはないというのです。
 昔の技術や技が失われていくということの比喩だと思います。

 ただのホラーではなく。
 どうやら一つ一つが深い意味のある話しだったようです。
 十年後くらいに読み返すと、全く違う何かが見えてくるかもしれませんね。

2019  8/14
令和 51冊目
☆☆☆☆☆ の なかなか味わいのある作品だった。


夢十夜 他二篇 (岩波文庫) [ 夏目漱石 ]
夢十夜 他二篇 (岩波文庫) [ 夏目漱石 ]