人が謎を引き寄せて、じらしまくる。ラストに見事に伏線を回収。


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KZ(カッズ)シリーズの第五弾
高校二年になった上杉が探偵として活躍する

藤本さんの作品を読むのは久しぶりだ
昔、西洋の歴史物を書いておられた時に、かなりお世話になった
だから、ミステリー小説を書かれておられると聞いて触手が伸びた・・・
正直に言うと、シリーズものと聞き、たいして期待はしてなかったのだが、後半夢中になった
おもしろかった

祖父の葬式の時、父親が子供にYシャツを汚されて
クリーニング屋でYシャツを引き取ってきたら、そこに血痕を落とした痕跡が
長崎の飛行機のチケット
母親は父の浮気を疑う
死んだ祖父の出身が長崎ということで祖母を訪ねると
祖父に同郷の謎の女性の影が
そこから祖父の日記をあさり、ナチの秘密文章のコピーにたどり着く
祖父は生前、何かをやっていて、それを今は父が引き継いでいるらしい
彼の家は医者の一家なのだ

ミステリーなのでネタバレをするとまずいので
謎解きのシーンは書きません
何やかんやあり、長崎の謎の女性を訪ねると
そこに子供の頃の知り合いの女の子が養女となって、その女性と暮らしていた
彼女は妊娠しており、父親は知らないという・・・

ナチの秘密文書 祖父と父のやっていた計画 謎の女の養女が父親のわからない子を妊娠

出てくる登場人物が、新たな謎を提示してくる
じらす、真実は未消化のまま、謎が謎を産む展開
後半の怒濤の展開はさすが・・・

幼馴染の多鶴の台詞が意味深だ

「女はなぁ」
思わせぶりな眼差しだった
「誰かを心に住まわせると、他の男には目がいかんもんなのよ」

多鶴の養母の謎の女(野枝)が死に
彼女は養母の地下実験室に彼を連れていく

「うちわな」
背後でベットを叩く音が響く
「ここで妊娠するねん」

さて、この血の臭いのする地下室で何が起こったのか?
ミステリーなので結末は話せない
たぶん、女性には納得いかない結末なのかもしれませんが
戦争の前後の出来事ということなので、私は納得しました
特殊な状況では、特殊なことも起こるのだろうと

ミステリーとしては、この強引な結末に少し?顔になるのですが
この成り行きでは、これしか考えられないのも確かです
読み応えあるミステリー作品なのです

ただし、探偵役の上杉少年には不満足
シリーズものなのだから、仕方ないのでしょうが、高校生が神戸や長崎に一人で旅したり
何日も学校を休んだり、ナチの秘密文章を翻訳させたり、父親の友人の医師にはったりをかましたり
高校二年にはどうしても思えなかった
大学生という設定なら良かったかもしれません





2019  8/21
令和 56冊目
☆☆☆☆ 結末に少し不満足も良く出来たミステリーでした。



密室を開ける手 KZ Upper File [ 藤本 ひとみ ]
密室を開ける手 KZ Upper File [ 藤本 ひとみ ]