武藤吐夢@ BLOG

令和になって読んだ本の書評を書いています。 毎月、おすすめ本もピックアップしています。

カテゴリ: 百田尚樹

おもしろい、作者のボクシング愛が噴火しています。超一級エンタメ小説。


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ボックスとは、「戦え」「ボクシングしろ」という意味である。
ダウンなどで試合中に中断した後、審判が言うセリフである。

高校ボクシングが舞台。
目線は2つ。
親友の鏑木という天才に憧れる木樽という優等生と
暴力が嫌いな女教師。彼女は無理からボクシング部の顧問にさせられた。
視点が素人なので、ボクシングの素人が読んでもわかりやすい
ときどき、監督やプロのトレーナーからの解説が入り
物語に没入しやすい

作者はボクシングをかなり偏愛しているようで
描写がリアル。だから、戦いのシーンは興奮する。楽しい。とにかく楽しい。

木樽という特進学級の素人が少しずつ強くなる過程と
天才なのに、サボりぐせのある鏑木
この二人がどのようにボクシングと立ち向かうのか
そこに大人たちが絡んでくる
顧問の先生と、ジムのトレーナーの爺さん

そして、絶対的な強者稲村という男の存在
木樽も鏑木も、打倒稲村が目標である。

地道に頑張る木樽に対し、天才鏑木は飽きっぽい
稲村に負けると、簡単にボクシングを投げ出してしまう

この様を語った言葉が胸に響いた

才能がある子は努力の喜びを知らない子が多いのよ。できないことが出来るようになることの喜びを知らない。ある意味、それは不幸なことやと思うのよ。

簡単に手に入れたものは、すぐに手放してしまう。これはよくあることで、お金でも、働いて稼いだ金は丁寧に使うが、宝くじで当たった10万は速攻で使ってしまう。そんなものだと思います。

二人は強くなっていく。そこには新しい景色がある。
それは過酷な世界なのだ。弱い時には感じもしなかったプレッシャーや挫折。

強くなればなるほど過酷で厳しい世界が持っている。
それはどんな世界でも同じである。

楽しみでやっていたボクシングと、優勝を狙うボクシングは
まったく違うものだ。

プロのトレーナーの爺さんが言ってた言葉は強烈

本当に強い軍鶏は頭が割れて脳みそが飛び散っても戦う

世の中には、そんなボクサーがいるのです・・・


これは木樽の成長の物語でもあり
鏑木の限界への挑戦の物語でもある。

突っ切った人間だけが見れる高見
それはどんなものなのだろう。

99%の人間が敗者で
勝者は優勝者のみであるという過酷な世界

そんな世界で戦うことの意味
なぜ、人は死にものぐるいで戦うのか
この物語を読んでいると何か底にある熱い情熱みたいなものが伝わってくる

人間を突き動かす原動力
それは何なのかと考えてしまう


2021 9 20
112冊目の読書
* * * * *

ボックス!(上) (講談社文庫)
百田 尚樹
講談社
2013-04-12

ボックス!(下) (講談社文庫)
百田 尚樹
講談社
2013-04-12









ファイティング原田をメインに、昭和のボクシング活況時代の熱量を描いたノンフィクション作品。


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ボクシングというと、亀田兄弟か辰吉くらいしかわかんないのだが
子供時代に「ロッキー」とかよく見てた。
あまり詳しくない。

本書は、ボクシングを扱ったノンフィクション作品である。
主に描かれているのはファイティング原田さん
その人生の熱量は凄まじい
読んでいて、かなり興奮した。
作者のボクシング愛は半端ない

この時代のボクシング熱はすごい
視聴率50%超えって異常事態です。

人生を、青春時代のすべてをボクシングだけにつぎ込んだ男の生き様はカッコいい
強敵をなぎ倒し、体力の衰えとも戦い
体重が増えたら上の階級で、また、チャンプになる
こんなこと、普通はできない
1つ階級が上がると、パードパンチャーのパンチが並になるそうで
それでもやる原田さんはすごい
努力、努力、努力
全部、ボクシング
それだけに集中
2階級制覇。3階級上のチャンプに挑むとかすごすぎる。

黄金のバンタムと言われていたチャンプに勝ったところが
この物語の頂点だと思うのだが
原田は勝ったが、作者はこう評している

ボクシングを長く見ていると、「運命」というものがあるような気がしてならない。2つの拳がコンマ数秒の間に何度も交差する。その瞬間、実は「運命」も激しく交差しているのだ。「運命の女神」さえ、どちらに微笑もうか迷うような試合において、勝利を掴むボクサーは実力以外の何かに支えられている。

トラブルで対戦相手が変更になったり、場所が敵地で判定が変だったり、半年遅れたため調整ができない。年のせいで体力が落ちた。調整の失敗。
当然、勝てる相手に負ける
勝てると思っていない相手に勝つ
だから、ボクシングは楽しい

ファイティング原田のボクシング人生には、そういう「運命」が濃厚に見え隠れする。
それは僕たちの人生とは明らかに質の違う何かのような気がしてならない。
そこが百田さんを夢中にさせたのだろう。
おもしろかった。

2021 9 19
111冊目の読書
* * * * *



現代社会を「カエルの世界」に置き換えると、まるでコント






カエルの楽園(新潮文庫)
百田尚樹
新潮社
2020-04-23

は、昔、読んだのですが・・・、酷評した記憶がある。
思想があまりにも一方的で、朝日新聞や中国、韓国、鳩山氏などをえげつない表現で罵倒していたからだ。
おもしろいことは面白いが下品すぎた・・・。

私は、どうしても政治的には中間なので、右翼も左翼も気にいらない。
それでも、伝えたいことの意味くらいは真摯に受け止める気持ちはある。
でないと、金を出して本を買わない。

今回は無料で5/9.10(土日)限定の新作公開ということで読んでみた

ふき出してしまいましたよ。
笑い過ぎて腹が捩じれそうになったよ。

現代社会を「カエルの世界」に置き換えると、まるでコント

百田氏は、コロナ騒動の戦犯として
主に3つを上げている

野党・・・意見が二転三転し、大切な時に、桜の会の話しに夢中だった。
新聞やテレビのメディア・・・その場の雰囲気で猫の眼みたいに意見を変えて国民を翻弄。
中国・・・ウイルスの起源

当然、首相の優柔不断も痛烈に批判している。
首相を操っている影の支配者親中派のツーステップ(鯨の好きな大物政治家)の暗躍と無能さも激しく非難している。

「とにかくナパージュは平等な国なんだ。だから、君たちのような他の世界から逃げてきたカエルたちにも公平に与える」

と日本(ナパージュ)を理想的な国のように言っている反面、そこにつけてり入り込んできているウシガエル(中国)のしたたかさを強調する。

ナパージュでは『カエルを差別するカエル』と言われたら生きていけないよ

という良いとされる側面が、逆に甘さとなり相手につけこまれていることを指摘もしている。

「ウシガエルの国から入ってくるハエや虫はナパージュの多くのツチガエルにとっても、今や欠かせないものになってしまった。ウシガエルを怒らせば、彼らのハエを当てにしているツチガエルの中には困るやつが多数出るということだ」

爆買いなどの中国人の消費行動への依存のため、彼の国から安易にコロナを流入させてしまったこと。

「君、病気のことばかり言ってるが、ハエのことを考えたことがあるか」エコノミンはいいました。「ウシガエルを全面的に止めたりしたら、彼らが持ってくるハエが入ってこなくなるんだって前にも言ったろ。ナパージュには、そのハエで暮らしているツチガエルもいる。ウシガエルのハエが入ってこなくなったばかりに、そのツチガエルが死んでしまったらどうするんだ。病気で死ぬのも、ハエが食べられなくて死ぬのも同じなんだぞ」

経済優先の考え方

そして、無能な野党

「ガルディアンと仲間の元老たちは、チェリー広場の話ばかりしていた。ウシガエルの病気のことなんか全然していなかった。今になってそんなウソをつくのは汚いよ」
「とにかく、ツチガエルが動けないようにするなんて、絶対に反対だ」
 ガルディアンは頑強に言いました。
「では、どうすればいいんですか」
「それを考えるのが元老のトップだろう。わしは反対するのが役目だ

作中、ハンドレッド(百田さんと思われる人物)の野党批判は強烈だ。

「あいつらには信念なんかないんだ。自分が元老でいられるなら、ウンコだって食べるようなやつらだ」

日本の国についても語っている。

「でもな、残念なことに、誰もそんな決定は下せない。お前たちはこの国がどんな国か知らないだろうが、ナパージュという国はな――動くのが遅くて、止まるのも遅いんだ」


物語の結論は、こういう風に続く

「病気に詳しい委員たちは、まだ移動の制限を続けるべきだと言っていますが、私の権限で、今日から移動を自由にします」
 しかしもうその頃には、ほとんどのツチガエルが弱ってしまって、満足に移動ができない有様になっていました。

自粛している間に、食いものがなくなって飢え死にする。
そういうラストになっている。

とにかく、重大事だというのに、政府首脳はおたおたし何も決められず決断が遅い
親中国派の重鎮に邪魔される
野党は無能
メディアはいい加減
このままじゃ、日本は終わってしまうぞという話しだった。

これは百田氏の頼りない政府やいい加減なメディアへの警告だと思った
中国を過度に敵視する視線には多少違和感があるのだが、色々と考えさせられる内容であるのは確かだ。

2020 5/9
令和2年73冊目
****



右翼系作家の百田さんが言いたい放題。いがいと面白い。




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先月、左翼系の作家平野啓一郎さんの本を読んだので、今回は真逆の百田さんを読むことにした。
僕は、別に右翼も左翼もこだわりがないので、どっちでも読む
こういう癖のある作家の方が本音を言うので学ぶところが大きいと思っている

本書の内容は百田さんが日ごろ思っていたことをしゃべったという内容である
第4章の炎上の言い訳以外は、しごくまともで参考になる読み物であった

気になった点だけあげていきたいと思う

・何でもコスパで考えるな!

この議論は少し僕と百田さんの間で世代間の格差があって
絶対に、これは認めることはできんのです

コスパは大切なのです
百田さんは、何でもコスパを重視する人間は馬鹿だと断定している
その理由に、子供づくりや結婚をあげ
子供を育ている費用として数千万かかりコスパに悪いとしていらないという若い夫婦を非難したり
コスパが悪いからと結婚しない人を非難したりしている

何でもコスパ重視する最近の風潮にそれは違うと警鐘をならしているのだが
それに僕は納得できない
若者が結婚しないのは、時代の変化なのだと思う
これぞという女性は収入や地位の高い上の世代に持っていかれ
趣味が合いそうな女の子は、男なしでも十分にキャリアがあるので男を必要としない
婚活などに行くと、積極的なのは親に言われて仕方なく結婚を・・・とか
生活の安定を・・・という女性で、自分たちを愛してくれる存在ではなく
そういう妥協的な結婚をするくらいなら独身がいいという考え方なのだ
つまり、好きでもない女性と結婚しても時間的にも金銭的にもコストパフォーマンスが合わない
親父世代である百田先生に僕たちの、この気持ちは理解できないと思う

いきなり、本書批判から入ったが賛同するところもあった

・図書館に新刊本を入れるな
せめて1年待ってくれという考え方だ
図書館は公共の無料貸本屋となっている現状は問題があり、出版不況でベストセラーなどに頼っている出版業界を圧迫している現状があるのは確かなことである。
官による民業圧迫だ
スウェーデンでは、本を借りた人から一定のお金を徴収しそれを出版社、著者、書店に配分しているらしい。これだけ日本で活字離れが深刻化し本が売れなくなった現状で、新刊をばんばん図書館が貸し出すのは少し無理があるという議論は賛同できた。1冊借りたら5%くらい払ってもいいんじゃないかと思うんだ。1000円なら50円だよ。

・地方議員はボランティアでやれ

日本の地方議員は給与が他国に比べてべらぼうに高い
号泣議員で有名な神戸は、給与と政務活動費を入れると年間2000万支給される
他国と比較するとイギリスでは無報酬。パリでは600万くらいらしい。百田さんの主張はこうだ。
地方議員の皆さん、議員をやりたいなら無報酬でやってくれ!
世界平和を言う前に、議員報酬を5パーセントでもいいから減らしてくれ!


・原爆慰霊碑の碑文を書き直せ

「安らかに眠ってください。過ちは繰り返しませぬから」
これを普通に読めば、われわれ日本人が広島の原爆の犠牲者に謝罪していると読める
だが、原爆を投下したのはアメリカである
広島に原爆を投下されたのは、暴走した軍部の暴発のせいだ
故に、アメリカは悪くない
日本のせいだ
「私たち日本人がよくないこと(過ち)をしたので、あなたたちが犠牲になってしまいました。もう二度とそんな不幸が起らないようにします」

これを戦地から帰ったと小野田さんがこう言ったらしい
「これはアメリカが書いたのか」
「原爆を落としたのはアメリカでしょう・・・・」
戦争は絶対によくない。だが、原爆を落としたのはアメリカだ。
これをゴマかすのはよくない。

戦争に関しては、上の世代の間に何かよくわからないコンセンサスがあるのか
あたかも広島の原爆が、日本人自らの手によって投下したような雰囲気になっている
これについての百田さんの主張は、右翼でなくても賛同できると思う
何で、オバマは広島で謝罪せんの?
何で沖縄では米兵が女性をレイプして軽い罪なの?
国を守って貰っているから仕方ないのだけども
何か変と思うのです
もちろん、戦争なんか二度とやっちゃいけません。


2019  9/10
令和 69冊目
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