汚水か何かを無理やり飲まされ続けたような不快感。まったく救いがないが名作。


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数作、韓国文学を読もうと思っています
日韓関係が悪かったことと、韓国の女性作家が描くモチーフが男社会に対するアンチテーゼのような側面があることもあり、少し避けていましたが、そろそろ・・・いいかなと思います


本作は、アメリカのミステリーの賞。ジャクスン賞受賞作品ということで読んでみた。韓国版ミザリーという評価らしい。
この賞は、スティーブン・キングや日本人では「リング」の鈴木光司さんなどが受賞されている名誉ある賞なのです
個人的な意見なのですが「ミザリー」よりもかなり上です
これはある意味名作と言ってもいいです

あらすじを簡単に説明すると、
オギという大学教授と妻が旅行中に交通事故にあい、妻は死亡、オギは目と左手が微妙に動くという植物人間状態なのです
オギには両親がいないので、義理の母親が彼の後見人となり介護をする
この母親は、韓国人と日本人のハーフです
娘の告発文。日記を読み、オギの浮気などを知り、それから、少し義母はになり
オギに対して虐待のような感じになり、庭に穴を掘りだすという奇行を・・・
最後はホラー的な展開となります

怖さというより、これは純文学だと思うんですよ
オギも妻も義母も何かどこかにがあって
妻は、優秀だけど転職ばかりして自分のやりたい仕事ができない
上司にパワハラとかされて・・・
自分に不満で、夫にも浮気をされてイライライラ
心が病んでいるタイプの女性
義母は日本人という出身を隠し、夫のいいなりで辛い生き方をしてきた
娘だけが生きがいだったのに、事故で失い心に大きな穴がある
一番、大きな穴があるのは、たぶん、オギで
彼は、それに最後まで気ずかないでいる

表題のホール。穴は、義母が庭に掘った大きな穴のことではなくて、登場人物それぞれ、いや、韓国社会における夫婦の問題、男と女の地位の問題。職場での女性の扱いの問題。平気で男は浮気してOKという、その男の価値観の問題。韓国の中の日本人という問題。そういう色んな社会問題が、穴みたいになっていて、そこは暗闇で底なしで・・・ということなのだと思う

だから、ただのホラーではなくて、小出しに見えてくる登場人物の過去が、じわりじわりと、この家の屋台骨を腐食していくような、社会全般が、この家族がシロアリであり蟻酸を撒き散らし周囲を溶かし穴を開けているような感じがした
とにかく暗い。まったく好きになれない、救いがない、心が晴れない
読むのがストレスの読書でした

義母のとげとげしさが、外にゆっくりと溢れていき、全体の雰囲気も悪くしていて
その義母を日本人としたことや、遺骨の入った骨壺を49日まで仏壇に置いておく風習を、いかにも異常な行為のように書く辺りには少し反発を覚えました
そんな異常な?
義母なのに、そんな人に頼らなくては生きていけない
それこそが、韓国社会の病巣ということなのかもしれないし
娘の夫の介護を義母がするのが当然というのも、そもそも変なのです

オギは地理の先生なんだが、地図というのは「正確たりえない」と言っている。
あとがきには、この作品じたいがオギを描いた地図なのではないか?と言っていた
何か、すごく深いような気もするんだが、よくわからなかった
混沌を描いたような作品なのでした
まちがいなく名作です
しかし、好きじゃない!


2019  12/9
令和 117冊目