作家は偏屈でないとおもしろくない。良い作品は、作家の個性から生じるのだ。



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カフカという人物が、どんな人間なのかを描いた作品だ
カフカは、かなりの変人だった
40歳で病気で死ぬまでに、ほとんど売れなかった
三度婚約し、全部婚約破棄
恋多き男なれど、幸せだったのかというと、よくわからない

今なら精神疾患で心療内科での通院をさせられると思う
最初に好きになったフェリーツェとの関係性がおもしろい
少しも好みじゃない女なのに5年も付き合うのだ
理由は単純だ。彼女には自分にないものがあったからだ

異性を好きになる時、その見た目とか性格とかが、私の場合判断基準となるのだが
人によっては、財力とか、社会的な地位とか、才能と言う人もいる
カフカのように「自分にないものを持っているから・・・」
自己の欠損点を他者で補完しようという考えも・・・「なるほど・・・」なのて゛ある。

そんなフェリーツェが、カフカとの5年の付き合いの中で
5日間しか幸せな日々はなかったと・・・

というのも、カフカは、直接会ってデートをしたがらない
どういう付き合い方なのかというと文通なのである。毎日のように手紙のやり取りをするのだ
どんな手紙なのかというと、自分の身体のひ弱さとか、精神の弱さ、生きていく能力のなさ、結婚に向いてないことなど・・・、自分のダメさが綴られています

彼は1日に何通も手紙を書きます
こんな言葉が残っている
「君も知っての通り、一通の手紙を書くと、これはもう群れを先導する羊みたいなもので、すぐに20頭もの手紙の羊が後に続くんだからね・・・」

そんなカフカの理想はと言うと「ひきこもり」
人間嫌いなので一人が好きなのだ

そんな彼も婚約した
すると、すぐに、不安が襲ってくるのである
婚約解消
こういう人は、結婚に向いてないと思う
よく5年も別れなかったものだ

カフカの変人ぶりを表すエピソードが残っている

本を出版することになった時に・・・
出版社に、こんなことを言っている

「出版していただくよりも、原稿を送り返していただく方が、ずっと感謝することになります」

欲がないというのか、自信がないというのか。かなりの変人だ


カフカは、健康オタクだった
サナトリウム(療養所)が好きで、まだ、病気になる前から通っていた
食事などにも気をつけて、菜食主義だった
そこでも、また、恋をして婚約し婚約破棄している

カフカは孤独が好きな人でした
でも、友達は多かったようです
彼は、絶望的に自己評価の低い人でしたから、逆に言えば、他者評価は高い
だから、周囲のみんなにすれば気分がいいのです
それは彼の優しさとも言えるのかもしれません
彼は人を大切にします。動物や魚が可哀想と言って食べません

彼には生きる能力がないと言われています
郵便局で貰った釣りが1クローネ多かった
それで思い悩み返還したら、その計算はあっていた
普通なら、諦めて「次へ」なのでしょうが
カフカは階段に立ち尽くしたまま、動けなくなり、それから、ずっと、その問題について話し続けるのだそうです。ややこしい人です
晩年の女友達のミレナは、そんなカフカをこう評しています

「フランツは生きることができません。フランツには生きる能力がないのです」

健康オタクのカフカは病気になりますが
絶望なんかしません
これで女性との結婚をしないですむし
嫌な仕事にも行かなくてすむと思うのです

こういう人だからこそ、ああいう作品が書けたのかもしれません
人間として失格なのですが・・・
昔の作家は、そういう人が多かった気がします
やはり、その人に内在する個性というものが作品に影響するのでしょうね
カフカという人間を知るのには良い書物でした
頭木弘樹さんが資料提供しているからでしょう。

2019  12/28
令和 125冊目
☆☆☆☆☆