読んだ本の数:13
読んだページ数:3329
今月はたくさん読めました。
収穫も多かった。
ーーおすすめ本ーー
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哲学の蝿は、圧倒的におもしろかった。
読者を選ぶ本ですが、かなり濃厚です。
エッセイ風の私小説
私小説であり哲学でした。
10の奇妙な語は、タモリさんの世にも奇妙な物語風
かなり面白いです。
夏見のホタルは、森沢ワールド爆発の小説
癒やし系です。
他、「鼻」も良い短編でした。
以下、簡単なまとめ。
桜風堂夢ものがたりの感想
桜風堂ものがたりの番外編。短編が4つ、ラストの物語は今いちだが、他3つは読み応えあり。ファンタジーの臭いに優しさが混ざっててとても心地よい。最初の森の幽霊屋敷を少年たちが冒険する話しはキングのスタンド・バイ・ミーぽくて好み。老婆の正体が良い。2つ目の話しと3つ目の話しは似ている。書店主が森で迷子になりながら過去と対面する話しのほうは温かい。次の書店員と死んだ父のプチデートは感慨深く、何となく父は死んでいるのだろうなと思っていたのだが、やはりであった。石川啄木の詩の引用はとても良し。
読了日:03月01日 著者:村山 早紀
怪談最恐戦2021 (竹書房怪談文庫)の感想
1つ1つが短く読みやすい。しゃべりを文章にしたという感じが強く、本当の意味での怖さというのは伝わらないのかも。葬式の夢の話しが一番怖かった。偽者の母親が出てくる話しもゾッとした。
読了日:03月03日 著者:
10の奇妙な話 (創元推理文庫)の感想
「境界線」がモチーフだと思う、それは日常と非日常とか、正気と狂気とか。そういうボーダーラインのことだ。典型的なのは「隠者求む」「ピアース姉妹」「川を渡る」だ。ピアース姉妹は最初、災難救助者という善人、しかし、助けた人間に理不尽な罵倒をされた。そこで正常の世界から狂気の世界に舞い込んだ。この豹変ぶりがゾッとする。隠者の話しもそうだ。正気が一転狂気に変わった時、そこに物語のダイナミズムがある。面白い。川を渡るの葬儀屋の老人は、たぶん、この世とあの世の境界線を彷徨ったのだ。これも興味深い。
読了日:03月06日 著者:ミック・ジャクソン
君と夏が、鉄塔の上 (ディスカヴァー文庫)の感想
自転車で鳥人間みたいに空を飛びたい少女と、幽霊が見える不登校の優等生、鉄塔オタクのまじめ少年。三人はある夏、1つの目的で動き出す、それは鉄塔の上にいる少年、たぶん幽霊。・・・の謎を解き明かすことだった。前半のおとなしい展開と比べて後半のファンタジー色が濃厚な鉄塔の線の上を歩くような世界は魅力的。
読了日:03月08日 著者:賽助
脳釘怪談 (竹書房怪談文庫)の感想
実話怪談だという、たしかに怖い。しかし、数が多すぎて印象に残った話しはそんなに多くない。やはり、最初と最後は怖い。呪いの寺に連れていくのは嫌いな孫。魂を食した粥、夜中に俺の魂を食ったやろと現れる白い和服の男。自分の顔が転がっているろくろ首に似た話し、床下に仏壇簡易式がある呪われた家、死者の食べ物は塩気がないというハンバーグの話し、血プリン屋はゾッとした。
読了日:03月10日 著者:朱雀門出
生物はなぜ死ぬのか (講談社現代新書)の感想
生物の進化の過程で死ぬということが意味があったということを知りました。恐竜が絶滅したから、哺乳類は進化した。つまり、死は次の世代のためのステップアップという風にも解釈できるのかな。それともう1つ、癌って怖いけど、老化というのは、癌にならないようにするためのメカニズムの1つだったという著者の考え方はなるほどと思った。死は動物の場合、次の世代の架け橋となっていて、鮭とかでもそうだし、蜘蛛のある種類のは子のため内臓とか食わせるというのだからすごいよ。面白かった。
読了日:03月12日 著者:小林武彦
夏美のホタル (角川文庫)の感想
田舎で見たホタル。この描写の美しさ。それよりも、もっと美しい優しい田舎の雑貨店に暮らす母と息子。この優しい物語には悪人は出てこない。親子とは何か?。生きるとは何か?。田舎の自然と、そこに暮らす人たちが読者に語りかけてくるようであった。森沢さんの作品は名言の宝庫だ。とても良い作品だった。癒やされた。
読了日:03月13日 著者:森沢 明夫
哲学の蠅の感想
エグっというのが正直な感想だ。これはエッセイと言っているが私小説、もしくは吉村哲学だろうなと思った。濃密な青汁を一気飲みさせられたような気分だが、実は、癖になるというか、嫌悪感を感じた本こそが印象深く、僕の中に爪痕も残したと思う。それにこれは深い。人生哲学というのか、吉村さんの生き様というのか、ここから学ぶことは多く。何度も何度も読み返して手元に置いておきたい本である。聖書の代わりに、まさか、そういう意味ではないが、とにかく強烈なインパクトだった。読み応えあります。この本に出会えて良かった。
読了日:03月19日 著者:吉村 萬壱
鼻 (角川ホラー文庫)の感想
第14回日本ホラー大賞短篇賞受賞作が表題作の「鼻」になります。その作品を含む3篇を収録した作品。「鼻」は2つのパートに分かれていた現実と妄想なのか。ラストのオチはありがち。「受難」は、珍しい展開で楽しめたが中途半端な感じがどうしてもした。「暴落」は人が株式のように売買される世界で、それは株式市場そのものなのかな。あるエリートが小賢しい知恵でそのマーケットというのか社会と対抗し没落していく様を描いたもので展開がかなりスリリングで面白く、ラストのオチはやっぱり感はあったが、これは力作というか秀作だと思います。
読了日:03月20日 著者:曽根 圭介
本当は怖い 京ことばの感想
京都の言葉、いわゆる「京ことば」を研究し京都人気質を表現しようとした書物でした。エンタメ風でありながらも学術本風。楽しめて学べるという感じのイメージです。意味が反対の言葉であるという部分は、かなり他府県民からすると難解で怖いですね。相手の心がよくわからない言語、それは歴史の集大成というべきでしょうか。言葉は柔らかく否定形をあまり使わない、ようするに対立を激化させないような婉曲表現がとられている。それもかなり極端です。行者さんが家の前でお経を読んでいるとおばあさんが「お通りやすーー」と言う。こういう断り方。
読了日:03月23日 著者:大淵 幸治
アリスが語らないことは (創元推理文庫)の感想
「そしてミランダを殺す」の作者の最新作。老本屋の亭主が殺された。ハリーという息子が謎解くをする。アリスは父の後添えである。現在と過去の二重構造となっていて、それが、二重奏のような効果となり胸に響いてくる。読みやすく、わくわくが止まらない。さすがミステリーの名手。構成も良く、最後まで目が離せない内容になっている。しかし、このアリスは悪女なのか。それはどうなのだろう。あたかも彼女は悪女のように語られるが、どこかに僕は共感を覚えるのだ。悪いのは継父ではないのかと思ってしまう。
読了日:03月26日 著者:ピーター・スワンソン
夜が明けるの感想
モチーフは貧困。無名俳優のアキ・マキライネンに似ている大柄の男と、主人公の出会い。そして、青春、彼の死までを描いた秀作。売れない役者のアキと、テレビのADをやっている主人公は、一昔前に問題になった「日本人の貧困」の典型的な雛形だった。売られない役者、芸人の生活の苦しさは理解できるし、ADという職業がモラハラやセクハラを受けやすいのもわかる。メンタルが崩壊し潰れてしまう主人公に「助けを求めろ」という森という後輩。その先には、たぶん、夜が明けるのさと思ってしまった。
読了日:03月27日 著者:西加奈子
ゴースト・テーマパークの奇跡 (角川ホラー文庫)の感想
角川ホラー文庫ですが、そんなに怖くない。あるテーマパークの話し。そこに幽霊担当のスタッフがいて、何かその土地が問題のある土地みたいなんですよ。幽霊の見える彼が問題解決します。怖いというよりも温かい感じの話しでした。異次元に繋がるという噂の扉の話しだけは少しホラー映画の魔の迷宮っぽい感じで他とはタッチが違うかな。これは好みでした。幽霊の父親と数十年ぶりに再会する息子との約束の話しとかは、感動を狙った感じすらします。悪くはないが感動はしなかったです。そこそこ楽しめるエンタメ作品です。
読了日:03月29日 著者:木犀 あこ