代表作「ダイヤモンドのレンズ」は今、読んでも素晴らしい。




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ポーの後継者と言われているオブライアン。
作風も似ていた。
幽霊が出てくる話しが多く、陰気で古臭く、当時のホラー小説の様子がうかがい知れる。

ダイヤモンドのレンズ
チューリップの鉢
あれは何だったのか?
なくした部屋
墓を愛した少年
不思議屋
手品師ピョウ・ルーが持っているドラゴンの牙
ハンフリー公の晩餐

収録作は8編。
「ハンフリー公の晩餐」は、O・ヘンリーぽく異質な感じがした。
「手品師ピョウ・ルーが持っているドラゴンの牙」は中国の話し
「不思議屋」はジプシーの話しでロボットものに分類されている。実際は、人形に悪い魂を入れる話しだ。

印象に残ったのは、「なくした部屋」。幽霊たちに部屋を乗っ取られて、最後は廊下に出されて扉が消えてしまい部屋に二度と入れなくなるという興味深い話しだった。
えっ、そんなオチなのとびっくりした。タイトルのまんまだが、まさか、部屋の存在が消えるとは考えてなかった。

全体的に、古臭くて読むのが辛く。150年前の作品だなぁ・・・と思わざるおえない。
幽霊ものも生ぬるい。手品師の話しは、途中で投げ出したくなるほどだった。

だが、1作品だけ、他とは、まったく異質な名作があった。
彼の代表作「ダイヤモンドのレンズ」だ。
今回、この本を読もうと思った、きっかけは、この中編を読みためだった。
顕微鏡に興味を持った男が、それにのめりこみ
究極の顕微鏡を作る
そのためにはダイヤモンドが必要となり、友人まで殺してしまう
この時点でかなりの迷走ぶりなのである。
完成した顕微鏡で水の中に美少女を見つける。
彼女の名はアニミュラ。
心理学者のユングが、すべての男の心の底に潜む理想の女性
それは、また、彼を滅ぼす命とりの女性とも言っている
その女性の名は、アニマ
つまり、魂
この美少女は、現実の光景なのだろうか?
それとも彼の狂気が見せる幻想なのだろうか?
この顕微鏡で美少女を見るシーンの描写は楽しかった。

すべて偉大な天才は、彼が偉大である分野に狂している。成功を収めなかった狂人は辱められ、瘋癲と呼ばれるのだ。
この作中の言葉は深い。




2020 5/26
令和2年86冊目
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