武藤吐夢@ BLOG

令和になって読んだ本の書評を書いています。 毎月、おすすめ本もピックアップしています。

カテゴリ: 村山 早紀

飼い猫と50代の女性が魔女と化け猫に転生し旅する短編集


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村山さんらしい魔法使いの出てくる優しいファンタジー短編集です。

人ならぬ身となり、黒猫メロディとともに空飛ぶ車に乗った律子は、旅先でいろんなひとや妖怪と出会ったり、時にはカフェを開いてお客様に料理やお茶をふるまったり……。2017年本屋大賞ノミネート作品『桜風堂ものがたり』や2018年同賞ノミネート作品『百貨の魔法』、そして「コンビニたそがれ堂」シリーズなど、ファンタジー小説の名手が贈る、ささやかな、小さな魔法の物語。


50代の女性と猫が死にます
魔法のランプの精のおかげで魔女に転生
猫ちゃんと二人、空飛ぶ車で旅する物語です。

心温まる児童文学作品の書き手というイメージの強い作者が
まんま、その世界観で書いた癒し系ファンタジー短編集

ぶっちゃけ、生ぬるいという感想でした。

旅するお雛様人形を持ち主に届けたり
廃校に住む学校の七不思議と交流したり

地元の神、戦国時代に死んだ姫
そして、先の戦争で死んだ少女との交流

そこに食をおりまぜて
いい雰囲気に癒される話しでした。

さて、この律子さん。
魔法使いになったのですが
その魔法について言及しています。

なんだか魔法って、目の見えない気のきいたお手伝いさんか、手慣れた助手のひとが何でもしてくれるみたいな感じ

印象としてはドラえもんでした。
何でも助けてくれる。

人間の世は辛い。
なのに神様は助けてくれない。

ここで律子さんは、神は死んだとか、神様なんか存在しないとは言わない

神様にとっての人間の命は、とてもとても小さなもので、人間にとっての小さな虫や、野の花の一本くらいの存在かもしれないな

神様の守備範囲の生き物の生命はとんでもなく多く
一人ひとりの人間の生命まで気にしてはいられない

神様の存在については疑わないようで・・・

見えない時もそこには星があるって、わたしは知っているんだわ

神も見えないし助けてはくれないけれどいると信じているということなのか

時には、こういう優しい物語に癒されるのもいいです。
ただ、途中で飽きてしまうかもしれませんよ。





2023 2 5
+ + +
読破nO19

不思議カフェ NEKOMIMI
村山早紀
小学館
2023-01-25




空港を舞台にした癒やし系の不思議な作品群。これぞ村山マジックって感じでした。



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村山さんの作品は、いつも何かの癒やしを読者に与えてくれます。
安心して読んでいられる安定感がある作家さんです。


今回も少しファンタジー色が強い短編集。
テーマは空港での出会いと別れ。

そこに降り立ち、飛び立つまでのひととき。
旅人たちの人生が交差し、奇跡が起こる。

第一話 旅立ちの白い翼
第二話 それぞれの空
第三話 夜間飛行
第四話 花を撒く魔女

三話の「夜間飛行」
1933年、ジャック・ゲランによって生まれた香水の名が〈夜間飛行〉。
サン·テグジュベペリの小説『夜間飛行』から創作された、多彩な表情を見せる香り。

二人の女性が空港の本屋で再会する。
30年ぶりくらいでしょうか。
一人は有名女優、もう一人は新人作家。
女優と作家は子供時代親友だった。女優が子供の頃につけていた香水が夜間飛行。
親友なのに、別離してしまった理由。それは空港での別れのエピソード。
その真実が衝撃的。まるでベルギーのあのチョコレートみたく甘くて優しい話し。
ちょっと感動すらします。

二話 それぞれの空は、本屋で働く女の子が子供の頃に迷子になって助けてくれた書店員女性の記憶
ドッペルゲンガーなんだけど、何か困っている自分を大人の自分が助けるという
いい話しなんですよ。

一話 旅立ちの白い翼
これは名作です。いっせいを風靡した漫画家だが落ち目
かつて恋人を親友に奪われてしまった過去がある。
今は、漫画家を廃業し実家に戻る途中
しかし、飛行機が遅れていて似顔絵を時間潰しに書いてもらうことに

この似顔絵師と漫画家のやりとりが素晴らしい

ネタバレさせます。注意!!。

夢を諦めて実家に帰るという漫画家に対して、似顔絵師は惜しいと言う。
彼の漫画が好きだったと・・・。

「夢、諦めなけきゃいけないんですかね?」
老紳士はいまは目を上げ、ひた、と亮二を見据えるようにしていた。
「夢の卵を抱えて、いつか孵る日を待つ人生というのも良いかと思いますよ。夢を見ることを諦めるのは、いつでもできますのでね」
「いやでも、俺の漫画家としての人生は、失敗に終わったと、その、思ってまして」
「人生に失敗とか、バットエンドとかってあるんですかね。生きているうちは続いている連載漫画みたいなもんじゃないかと思うんですが、そう勝手に打ち切らなくても」
「・・・人生という漫画の読み手は自分、描くのも自分、読者の気がすむまでは夢の卵を抱えていてもいいんじゃないですか?」

元有名漫画家だという似顔絵画家のこの言葉は胸にささる。
漫画家は、そこに元カノと親友の結婚式の似顔絵を発見
二人は空港で式をあげ、君が来るのをいつまでも待っていると言っていた。
漫画家は自分の似顔絵をその横に飾ってもらう
そして、この後、二話の主人公の書店員と出会う。
彼女が、彼の最後の作品に情熱的なポップを書いていて・・・


2022 4 29
* * * *
読破NO64


風の港 (文芸書)
村山早紀
徳間書店
2022-03-10

桜風堂ものがたりの番外編だが、なかなか良い読後感でした。


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桜風堂ものがたりの番外編
短編4つ収録

少しファンタジーで、周囲を優しさでコーディネートされているみたいな感じでした。
過去の悔恨を現在で解決していくみたいな感じが強かったのかな。

最初の秋の怪談という話しは、少しキングの名作スタンド・バイ・ミーに似ていた。
森にある幽霊屋敷に探検に出る話し。
しかし、そこには老婆が住んでいた。
本が好きなようだった。
電車の中で目撃したのだ。

本の好きな人に悪人はいない
・・・ひとは、一冊本を読むごとに、その本のぶんだけ、優しくなれるんだと信じている。

だから、あの幽霊は怖くないというのだ。
これは作者の願望なのだが、何となく本の好きな人には世間的な平均よりまともな人間が多いように思える。この意見には少しだけ賛同したい。

とにかく、面白い。老婆の正体とか、少年と老婆が接する場面とか
そして、やっぱり老婆は優しい人だったのだ。

2つ目の書店主が森で迷子になり、過去のいろんな場面と向き合う話しもいい
書店主柳田のセリフがいい

過去はいつも・・・思い出はいつも、俺の後ろにある。影法師みたいに一緒にある。だから俺は、ひとりじゃないし、思い出の中にいるみんなも、ひとりじゃないんだ。存在は虚しくなんかないんだ。俺が忘れないからだ。一緒に未来に行くからだ。

3つの目の話しが一番好きだ。
書店員の女性が、森の道で子供の頃からずっと音信不通の父と再会する。
父は有名人。病気と聞いていた。晩年は不遇らしい。
母と自分を捨てたので憎んでいる。
この二人だけのプチデートがいい。
過去と現在をシンクロさせながら語られる展開は興味深い。
ネタバレさせると、父は死んでいる。
死人が娘に会いに来たのだ。
その根底にあるのは父の娘への優しさ
悔恨。
なかなかに感慨深い作品であった。
この話しだけでも読む価値あり。





2022  3  1
* * * * *
読破NO 32


桜風堂夢ものがたり
村山 早紀
PHP研究所
2022-01-12

猫に対する優しい視線が、とても心地よかった。



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猫にまつわる短編集
作者の猫に対する愛情が伝わってくる。
その優しさが沼みたいになっていて
気がつくとはまりこんでいて
そこが何とも心地よい


最初の捨て猫を少女が隠れて育てる話しがいい
少女の優しさ
猫が死んだ時の家族の優しい対応
何ていい世界なんだと思ってしまう
その背景には、少女の猫に対する愛がある
そこを上手く表現できているのが良い

3話のおばあちゃんところの猫
母子の猫の話しもいい
子猫が死んだエピソードは悲しいが
皆で埋葬してあげる様は
とても優しくて愛情が溢れている

挿絵も優しくていい

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文章をよく補完していて
世界観をともに形成している

猫大好きが伝わって来た。

そういう猫に対する気持ち
優しい想いが伝わってくる
子供向けの本かもしれないが、よく出来ていると思う。
すごく幸せな気分になれる本です。


2021 1/2
1冊目の読書(2021年)
****


約束の猫 (立東舎)
げみ
立東舎
2020-11-19

優しい魔女の話しを読んでいると癒されてくる。



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魔女の出てくる話しと言えば「魔女の宅急便」がいいですね。
あれ、大好きです。空を飛んだり、黒猫が出てきたり最高です。
本書は、魔女が登場してくる短編集です。
七竈七瀬という名前の高校生ぐらいに見えるが、本当は100歳オーバーなのです。百七十を超えています。
この子が魔女です。他に年配の優しい老女の魔女も出てきますが、この二コラの出てくる話しがいいです。

落ち込んでいる人に、こんな声をかけてあげます。

「ねぇ、寂しい時は、ひとりで暗いところにいてはだめなのよ」
さて、魔女とは何なのか?。
こう答えています。
「魔女はひとりで旅して、ひとりで生きていくものだから」

サンライズ・サンセットというお話しが好きです。

若い兄弟が出てくる話しです・・・
願い事を言ってごらんと魔女に言われて
兄は、野球選手のサインが欲しいと言います。
弟の願い事がいい。

「魔女様、ぼくの願い事は、お兄ちゃんの願い事と同じでいいです。お兄ちゃんの願い事を叶えてあげてください」

何か、胸が熱くなる話しです。
40年後、兄が魔女を訪ねてくる。昔のままの姿でした。
つまり、死んだのです。
彼は中年になった弟と再会します。

この再会は、保留になった弟の願い。
死んだ兄と再会したい・・・。

すごくいい話です。
魔女の二コラの台詞がいい。

「思うに、魂はきっと消えたりはしないのよ。人間たちのだけじゃない。魔女や使い魔の魂も。消えたように見えても、世界のどこかに溶けているだけなんだね。会いたいと思えば、こうして会えるの。お盆じゃなくたってさ」

優しい魔女の話しは、少しささくれた心を癒してくれました。

2020 6/14
令和2年 101冊目
****


魔女たちは眠りを守る
村山 早紀
KADOKAWA
2020-04-16

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