原作を読むことで映画のイメージが変化する。ジブリ映画の原作。


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子供の頃からジブリ作品が好きだった。
テレビで映画を見始めたのは、ナウシカとラピュタの影響が大きかったし
となりのトトロはDVDも持っていた
はじめて女の子とデートして見に行ったのか、もののけ姫。
大好きなのは、魔女の宅急便
原作もたくさん読んでいる。
中でも、ゲド戦記の原作はおもしろかった。

ようするに、ジブリファンだったということです。


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本書は、「思い出のマーニー」の原作本
この本を読むと映画の印象が変わってくる
深まる
新しい発見がある。

あらすじを簡単に話すと、
ロンドンからきたアンナは、湖の近くにある湿地の館で金髪の美少女マーニーと出会う
という話しです。
このマーニーが今の人ではなく、50年前の人
ラストで自分の祖母であったと明かされるのです。

映画を見ていた時は、マーニーとアンナの交流
過去と現在の交差
不思議なSFという認識だったが・・・
原作を読むと、かなり印象が違ってくる

ロンドンからきたアンナは孤児です。
母が交通事故で死に、世話をしてくれていた祖母も病気で死ぬ
ロンドンにいた親切な夫婦の養子となる。
しかし、その夫婦のことを「おじさん」「おばさん」と呼んでいます。
彼女は、自分が養女であることで孤立を感じているのです。
さらに、夫婦はお金を貰っていることも知る。
つまり、彼女からすると、金のために・・・引き取ったとなるのです。
この辺りの少女の孤独を原作本は丁寧に描いています。

そんな孤独な少女が田舎町にやってくる。
そこでマーニーと出会うのでした。

マーニーは祖母なのですから、当然、彼女にだけ見える。
どうして50年前の過去から彼女がやってきたのか。
それは大切な孫への「愛」だと思う。
絶望のどん底にいる孫に対して、この世界には、あなたのことを必要としている人間がいると伝えたかったのです。
それから、祖母は自分のことを孫に知って貰いたかったのかもしれません。
いずれにしても、そこに共通しているのは「愛」です。
こういう見方は映画ではできなかった。

これは不思議な過去と現在を繋ぐSFの話しではなく
孫と祖母の「愛」の物語なのです。

近くに住む性格の悪い女の子や、彼女のことをいつも優しい視線で見守っている彼女の世話をしている夫婦。湖の無口な漁師の存在が、このメインのストーリーに重みをくわえていきます。

新しく、館に引っ越してきた一家と彼女は親しくなる
そこから一気にラストに向かっていくミステリーのような謎解きは
すごく楽しい。映画の内容を忘れていたのもあり、「おーー、そうだったのか」と手をたたきそうになった。

マーニーとアンナの間の会話にこんなのがあります。

だって、あなたはあたしの大切な秘密なんですもの。だから、誰にも話してないの。これからだって話す気はないし。もし話したら、せっかくの秘密がだいなしになっちゃうから・・・
この二人だけの秘め事というのが、より一層に互いを引き付ける磁石となるのです。
秘密を共有すると、一心同体のような錯覚を覚えることがあり
その心理をうまく作者は利用しています。
マーニーと彼女の関係は、普通の友達以上の関係だと示唆しているのです。

映画では、どうしても2時間にまとめなくてはならないので、原作の絵になるシーンだけをパッチワークみたいに集めてダイジェスト版のようになります。
それでもいいのです。世界観はきちんと踏襲されているし、魅力は伝わるのですが、もっと深読みしたい。もっと知りたい時は、原作を読むといいようです。すると、もっと楽しめます。わくわくするような別の発見があるかもしれません。それが原作本読みのだいご味だと思います。

2020 6/12
令和2年 100冊目
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思い出のマーニー (新潮文庫)
ジョーン・G. ロビンソン
新潮社
2014-06-27